インド映画でちょっと休憩

インドに愛を込めて

Dharam Sankat Mein/信じる心、危機一髪!

日曜日も終わるし、景気づけに1本映画観てから寝るか~~…と軽い気持ちで観た映画が思いの外よかったので感想書きます。

 

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2015年公開

出演:パレーシュ・ラーワル

   アンヌー・カプール

   ナスィールディン・シャー

監督:フワード・カーン

言語:ヒンディー語+日本語字幕

時間:127分

ジャンル:コメディー

Netflix邦題:信じる心、危機一髪!

 

あらすじ

ダラムパル(パレーシュ・ラーワル)はヒンドゥー教として育った、ごく普通の男。

ダラムパルには息子と娘がおり、息子には付き合っている彼女との結婚話が持ち上がっていた。問題は彼女の家族がヒンドゥー系新興宗教ニール教に心酔していたこと。2人の結婚には反対しないダラムパルだったが、ニール教の導師ニーラナンド(ナスィールディン・シャー)はうさんくさいところがあり、どうも馴染めない。

そんなある日、最近亡くなった母の遺品を整理していたダラムパルは、自分の養子縁組の書類を見つける。自分が養子であったことと共に、本当の生まれはヒンドゥーではなくムスリムであったことにショックを受けるダラムパル。彼はイスラム教が好きではなかった。近所に住むムスリムとはご近所トラブルが絶えないし、朝早くから鳴るアザーンも嫌いであった。

ダラムパルは戸惑いながらも、早速父に会いに行く。しかし、父を世話している施設に「あなたがムスリムでない事を知ったらお父さんの健康に影響する」と面会を断られてしまう。

息子の結婚と、自分の出生と父で、宗教の板挟みになってしまったダラムパルは…。

 

いろいろ

脇役オッサンたちのコメディーって結構小規模のが多くて、インドであまり話題にならないし、日本のファンが感想書いてるのもあんまり見かけないし、スルーしがちなんですよね。今回『Dharam Sankat Mein』も、見かけた日本語レビューはツイート1件くらいで、時間と共に忘れてしまいそうな存在感でした。いやはや、パレーシュ・ラーワルもアンヌー・カプールもナスィールディン・シャーも(私が知ってるくらいですから)そこそこ有名な俳優さんたちであることは紛れもない事実ですけど。

ってなわけで、今回もスルーしてしまってたんですよ。2015年、2年ほど前の映画です。最近Netflixに入ってきて、なんでこれ入ったのかなぁ~ってくらい、個人的には注目度が低かったんですよね。でも見かけたツイートがこれを「面白い!」と書いていたので、それならちょっと観てみようかなぁと思った次第です。

 

で、観てみたら超面白い!

ちゃんと笑えるコメディーで、それと同時にインドの宗教を色んな視点でとらえています

インド×宗教もの映画としては『pk』がいまのところメジャーですが、『pk』が外部者のまっさらな視点で宗教の問題をあぶり出してるのに対し、こちらはヒンドゥー教徒・イスラム教徒、または多数派と少数派といった"当事者たち"の目を通して描いています。そこがリアルで面白いところだなあ、と。

当事者たちの宗教映画としては『OMG - Oh My God!』の系譜でした。ポスターでは製作スタジオは『OMG』と同じところとアッピールしてるし(スタジオはViacom 18のことを指してるのかな?)、劇中にも一瞬『OMG』がカメオ出演しています。

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(このシーンを観るまで全然『OMG』の事意識してなかった私は予習してなさすぎであるw)

 

ちゃんと笑えるコメディーって点では、かなり満足。主人公のアイデンティティの崩壊は本人からすると深刻なものなんだけど(今まで生きてきた土台みたいなものが崩れそうになってるからねぇ!)、あの導師が見るからに怪しすぎたり、昼はヒンドゥーで夜はイスラムの勉強をして頭大混乱になったり、コソコソして奥さんに浮気を疑われたり、わちゃわちゃしててとても楽しいのですよ。

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(ナスィールディンさん演じる導師が派手すぎる)

私が声を上げて笑ったのは、ムラリー・シャルマ氏の登場の瞬間でした。おとぼけパレーシュ・ラーワルさん。

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(↑ムラリ氏はお父さんがいる施設の人。厳格なイスラム教徒でまじめなキャラでした。そこにのっけからボケをかますパレーシュさんがヤバい。)

 

後半はだんだんとコメディーは鳴りを潜め、シリアスな雰囲気が強くなります。ダラムパルが、ナワーブさん(近所に住むムスリムでダラムパルに協力してくれていた弁護士)と喧嘩した時、ナワーブさんの台詞が悲しい。ナワーブさんの言うことは、少数派のムスリムの叫びかもしれないなぁと思いました。インド建国に助力し、インドに愛国心があっても、それを示す場がなく、テロがあれば自分たちのせいにされ、偏見の目にさらされ…。(この少数派の辛いところは、宗教に限ったことだけではないような気がします。)

ダラムパルも、あれやこれやと宗教の板挟みになった結果、散々なことになります。そんな彼が勝負に出た時、彼が本当に求めていることを話すんです。それにとても共感しました。宗教ってなんだろう、そんな疑問に対する一つの答えかもしれません。

 

動画

予告編~~

一部アラビア文字風なフォントいいですね~こういうの好きです。

 

ダラムパルのお気に入りとして、マンジート・マンチャラという歌手が劇中に登場(ターバン巻いているお兄さんがその人)。ノリノリのパンジャビソング!

「Tu Takke」

↑映像が新しそうだからダラムパルの最近のお気に入りかと思ってたら、数年(~数十年?)前に表舞台から消えてしまった歌手、という設定でした。

ターバンのお兄さんのこと調べたら、パンジャービー映画界で俳優や歌手をやっているようです。ちなみにターバン巻いてないより巻いてた方がカッコイイw

あとダラムパルたち家族が踊ってるところはプロモ用で本編には出てきません。

 

ニーラナンド氏のうた。

「Neelanand」

それにしても導師姿が似合っている…

 

 

余談

Netflixで観れます。

https://www.netflix.com/title/80165850

 

インドを舞台に宗教を主なテーマにした話なので、宗教事情を全く知らない人が観たら分かんないこと多いかも。劇中で一つ一つ解説してくれないしねぇ…。
この辺のこと私はインド映画を観てじわじわ学んでいったので、インド映画を普段から観てる人なら大丈夫かな。

ざっくり書くと、インドではイスラム教徒(ムスリム)は少数派。ヒンドゥーとムスリムは仲があまり良くない場合が多く、事件になることも。あと、その人の名前を聞けば何の宗教の人かあらかた分かるようです(カーンはムスリム、ピーターはキリスト教徒、とか)。などなど…。

 

そういえば、ダラムパルがイスラム教徒のこと勉強する時、発音をしつこく教えられてました。「ka」じゃなくて、息が入る「kha」と発音するのを練習してました。あれはもしやウルドゥー語だったんでしょうか?(誰か教えて!)

 

宗教のるつぼなインド、外国人からするとインドの色んな顔が見れて楽しいけど、なんだか大変そうだなぁと思ってしまいます。