インド映画でちょっと休憩

インドに愛を込めて

ザ・ブローラー/喧嘩屋(Mukkabaaz)

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2018年公開

出演:ヴィニート・クマール・シン

   ゾーヤー・フサイン

   ジミー・シェールギル

監督:アヌラーグ・カシュヤプ

時間:155分

言語:ヒンディー語+英語字幕

 

【あらすじ】

喧嘩屋と呼ばれて終わるか、ボクシング選手になるか、お前次第だ

ウッタル・プラデーシュ州バレイリーのボクシング選手シュラヴァン・シン(ヴィニート・クマール・シン)はコーチのバグワーン・ダース・ミシュラー(ジミー・シェールギル)に雑用でこき使われるばかり。反抗した彼はバグワンに暴力を振るってしまい、徹底的に嫌われてしまう。バグワンは地元で力を持つ政治家でもあり、シュラヴァンは試合にさえ出させてもらえずいよいよ選手生命の危機に陥る。そこで彼は同じ州のバラナシにあるボクシングジムを訪ね、そこのコーチ サンジャイ・クマール(ラヴィ・キシャン)に師事することになる。試合に出たシュラヴァンは次々試合に勝ちバグワンの抱える選手にも勝利する。

大会でメダルを得てインド鉄道に就職した彼は、かねてより付き合っていたスナイナー(ゾーヤー・フサイン)と結婚を果たす。しかしバグワンは自分より低いカーストの彼がボクシングで活躍し、さらには自分の姪であるスナイナーと結婚したことに不満を募らせ、シュラヴァンに対し情け容赦ない妨害を仕掛けてくる…。

 

いろいろ

めっちゃおもろかった!!

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傑作って最初の5分…は先走りすぎか、いやでも十数分もしたら気持ちが高揚してしかたなくなるやつだと思うんですよね。そんな映画です。全然関係ない映画だけど『世界はリズムで満ちている』もそんな映画でした。(※ここで言う「傑作」は、あくまでも観る人個人にとっての「傑作」って意味です。)

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↑先走るelzaの図

なんというか、見せ方が上手い。映像のことはド素人だからトンチンカンなこと書いてるかもだけど、これは編集が上手いってことなのかな? マサラ風味のエンタメ大作と比べるとリアル寄りで淡々としてるけど、そこがすごくかっこいいから気分がどんどん上がってくるのを感じました。

 

バグワーンの家における、自分の子供以外にも力で圧力をかけるほどの過剰な家父長制、

権力を持つ側が縦横無尽に力を振り回し、それに振り回される個人といった対比で描かれる格差、

時代が変わってもなお根深く残るカースト制度、

他者に攻撃的になるほどに過剰に保守的なヒンドゥー、

インドにおけるスポーツの地位の低さ、

などなど、今まで観たインド映画、特に最近流行っているスポーツものでサブテーマとして描かれる社会問題がこれ1本にぎっしり詰まっている感じでした。これを、綺麗すぎないリアルさで、ドラマチックに、シニカルに描いてるアヌラーグ・カシャプ節…痺れるぜ…。

スポーツでいい成績おさめるとどこかに就職できる仕組みだったり、逆にスポーツ選手はいい成績でないと無職同然だったり、ヒンドゥー教徒が肉を持ってる人に「神聖な牛の肉を食べるとは何事だ!」って言って迫害する事件があったり、ここ最近観たインドスポーツ映画と最近のニュースで見る社会問題の総復習ってくらいいろいろ起きる展開でした。あ、でもその辺は予備知識を前提とすることはないのでいきなりでもイケると思います。

 

このストーリーで起きるさまざまな問題の権化は、ジミー・シェールギル演じるバグワーン。

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(まあ彼以外を原因とする問題もあるんですけど)

まじコイツえげつない。ジミー・シェールギルわりと好きな俳優なんですけど、それでもかなりの胸糞な人物でした。物事を自分の思い通りに動かすためには、血縁関係があったって攻撃対象にする…こわい。

こういう凡人では到底かなわない悪を目の前にした、ボクシング以外なんの武器もない主人公がどう抗うのかが見ものでした。ハラハラしましたよっっっ(鼻息が荒くなる)

 

主人公のボクサー役はヴィニート・クマール・シン

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いやー、よかったです。

かっこよすぎない感じがとてもいいです。地方の小さい町で奮闘する感じがはまってました。

あとですね!!!笑顔がね!!!可愛いんですよ!!!彼女に前にして照れた時の笑顔が!!!!!

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(↑ここ以外もある)

彼ボクシングやってるし試合以外にもいろいろ身体的に痛い目に遭うんですけど、一番痛そうにしてたのはカノジョに顔をグーで殴られた時でしたw

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彼女のスナイナーは実は喋ることができず(耳は聞こえる)、思い通りに受け入れてもらえない時とか哀れみの目を向けられる時とかガチでプンスコ(`・ω・´)しててそれがかわいかったです。すぐ怒る。そしてわりと強い。主人公の次に強そう。それと、自分の考えていることを手話でぶつけるのが妙に良かったです。

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演じるゾーヤー・フサイン、初めてお会いした女優さんかと思ったらIFFJ2018『六人と一間』でジム・サルブと交流してた女の子で居ました。そうか、あの子か。『六人と一間』もアヌラーグ・カシャプが絡んでたってやつだったから『Mukkabaaz』で縁があったのかもしれない(Mukkabaazが先?)

そんな可愛い×2なカップルがオアシスでした。

 

後半、びっくりするほど大変なことになって主人公が奮闘するんですけど、それに自己犠牲度高いレベルで協力する親友が居ます。献身的な親友の存在、インド映画における鉄板の域。命がけで逆境に抗う主人公と主人公に振り回される親友どちらが大変だろうか…(笑) ちなみにシュラヴァンの親友はゴーパールって名前で、柄シャツ&ネクタイの私服がめっちゃ芋男子ファッションでした。ゴーパール君いつか幸せになってくれや…。

 

正直全人類に観せたい勢いで気に入ったので年間暫定1位です。めっちゃオススメです。いやでももしハマんなくても責任は取れないけど…(笑) 人を選ぶ映画かもしれないけど…。やーでもこういうのも日本で公開してほしいな~(←追記:Jaihoで期間限定配信されました)。インドではヒットしてないのが不思議なくらい見応えがある作品でした。

 

リンク

「♪Haathapai」

 

これは本編(DVD)でカットされたシーン

「♪Blonde Balma」

 

「♪Mushkil Hai Apna Meil」メイキング

ナワさん!!!!!!!!!!!!!ナワさんは特別出演で一瞬登場します!!!