インド映画でちょっと休憩

インドに愛を込めて

Dil Bechara(やるせない心)

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2020年公開

出演:スシャント・シン・ラージプート

   サンジャナー・サーンギー

   サーヒル・ヴァイド

   サスワター・チャタルジー

   スワスティカー・ムカルジー

監督:ムケーシュ・チャーブラー

言語:ヒンディー語+英語字幕

時間:101分

媒体:ネット配信(Hotstar)

 

あらすじ

大学生のキズィー(サンジャナー・サーンギー)は自身が抱える甲状がんの闘病のため、退屈な生活を送っていた。友達は携帯型の酸素吸入器"プシュピンダル"だけ。それと有名な歌手アビマニュ・ヴィールの歌が心の支えだった。

大学の文化祭が行われたある日、キズィーは構内でマニーことイマニュエル・ラージクマール・ジュニア(スシャント・シン・ラージプート)と出会う。彼はラジニカーントのファンで、自身が主演の映画を撮っており、キズィーをヒロイン役に誘う。彼は今は骨肉腫で右脚を失っていたが、彼自身が持つ陽気な性格によって、楽しく暮らしていた。

キズィーは初めこそいたずらっ子な彼に距離を置いていたが、映画の撮影が進むにつれお互い惹かれあうようになる。

なかなか連絡が取れなかったアビマニュ・ヴィールからメールが届き、パリに行けば会って話ができることになる。会って未完成の歌のことを聞きたいと思っていたキズィーだったが、彼女の病気の状態は旅行に適しているとは言えず、医師や母からパリ行きを反対されてしまう。そのうえさらに、キズィーの容態が急変してしまい…。

 

いろいろ

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コロナのせいでインドで劇場公開ができず、最終的にネット配信での公開に至った作品です。

アメリカの小説「さよならを待つふたりのために」が原作。こちらは映画『きっと、星のせいじゃない。』も制作されて日本で公開されたので、お話知ってる方結構いるかもしれません。私は原作小説も映画の方も観てないので、この後の感想はまっさらな状態の人が書いている理解していただけると。(『Dil Bechara』を機に観ようか迷ったんですが、そうすると比較の目線で観てしまうのを避けたかったので)

 

そして、スシャント・シン・ラージプートの遺作です。当初の公開が5月だったんですが先述のコロナの件で公開保留にされてる間に亡くなってしまいました。

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こんな可愛い笑顔してて、いい意味でいつもと変わらない陽気なキャラクターで、少しいたずらっ子なところも彼のよくやる役のイメージと近くて。それが嬉しくもあり、余計に悲しくもあり。観客が映画の本質的なところと関係ないところに想いを馳せてしまうのは俳優の仕事にとっても映画にとってもあまりいいことではないような気もしつつ、こればっかりは避けられないので仕方ないですね…。

とはいえ、観た後の気持ちの大部分は映画から来るものだったと思います。なぜなら亡くなった直後に観た『Raabta』はもうちょっと落ち着いた感想だったので。

 

 

闘病や死と隣り合わせの人々のドラマで色々な感情が沸いては混ざってくる映画でした。胸がぎゅーっとして言葉が出てこない。最後は涙が止まらず字幕まともに観れないくらいでした。映画館じゃなくてよかったかも、泣き腫らした顔で劇場から出てくるのちょっと恥ずかしい。メンタル暴走しちゃったのでまだうまく整理がついてないです。整理つくの待ってたら感想が数年越しになってしまうので今書きますが。かなり気持ちがぐちゃぐちゃになってしまっていて、あまり理路整然と書けるところがありません。書けそうな感想が薄いですが、これは映画が薄かったとかあまり感想が出てくる映画じゃなかったとかではなくて、色々ありすぎて逆に言葉にできないってパターンです。

正直なところ、お涙頂戴系や不治の病系は最初から悲しいって分かってるし観てる間も辛いので個人としては苦手なんですよね…気持ちが醒めちゃうってよりはがっつり泣いてしまうのがあってですね。映画の懸念点はそこだけありました。で、まんまとかなり揺さぶられたんですが。結局弱いんだこういうのに。元々避けてるジャンルなのもあって、めちゃめちゃ感情揺さぶられた=とても気に入った映画かと聞かれると即答できないw

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でもすべてのシーンが印象的で、そういった意味で無駄がなく、彼らの短く(って書くとすぐ死ぬみたいになっちゃうけど)小さな世界が愛おしくて、彼らは自分とは違う人間だけど一緒に大切に宝箱にしまっておきたい映画でした。オタク用語的に言うとまさに「尊い」なんだけど、うーん、2文字で終わらせたくないなこれ。

生活に不満がありつつも一方で諦めている主人公のキズィーと、そこに現れたマニーはやりたいことに躊躇がなく真っ直ぐで、生きることに対して対照的な2人が惹かれ合うってのがいい。描写的にキズィーがマニーから受けた影響が多そうだけど、きっと多分マニーもいっぱいキズィーから色々受けたよね。惹かれ合うってそういうことなのかなって。とにかくこの2人のカップルが最高に可愛くて愛おしい。単体でもいいパフォーマンスでしたけど2人のセットがいいですね。soooooooo sweetですよほんまに!

 

スシャント君の映画って『きっと、またあえる』もそうだけど"生"を感じるものが多いんだよなぁ。

 

↓ここは原作にない話らしい

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自主映画撮ってるシーンが面白くて微笑ましかったです。

自主映画と言っても社会派でもなんでもなくて、普通に娯楽映画っぽいものを目指していましたね。インド映画あるあるなシーンが盛りだくさんって感じの撮影。設定上素人感がある撮影になるのがわかってても楽しく撮ってますっていう空気からしてもう可愛らしい。

ところでマニーがラジニカーントのファンなので家系はタミル系の設定なのか?と思ったけどそうでもないっぽかったです。ただ単純にラジニのファン…?

 

 

色んな意味で観るのがしんどい映画ではありますが、とても温かくてエモーショナルで愛にあふれてて悲しくて意味のあるものでした。観られる環境にある方はぜひ。

 

リンク

ワンカット撮影のタイトルソング

音楽はA.R.ラフマーン、振り付けはファラー・カーン

 

予告はリリース直後にYoutubeで『アベンジャーズ』の記録を抑えて最も人気のある予告動画にランクインしたそうです

 

映画撮影シーンがすごく好きなのでこれをオススメしたい

「Maskhari」