インド映画でちょっと休憩

インドに愛を込めて

Kaamyaab(成功)

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2020年公開

出演:サンジャイ・ミシュラー

   ディーパク・ドーブリヤール

   イーシャー・タルワール

監督:ハールディク・メヘター

言語:ヒンディー語+英語字幕

時間:104分

媒体:ネット配信(Netflix)

 

あらすじ

数々の映画に出演しつつも今は俳優業を引退している脇役俳優のスディール(サンジャイ・ミシュラー)。有名な名台詞を持つ名脇役だったが、今は静かに隠居生活を送っていた。しかしある日TV特集のインタビューを受けた際、自身の映画出演本数が499本で留まっていて、あと1本で500本の大台に乗ることを知る。彼は記念すべき500本目の映画に出演するため、俳優に復帰することを決めるが…。

 

いろいろ

飄々としたおじさんキャラが好きなサンジャイ・ミシュラーが色んな恰好をやるっていうポスターを見て一目で「観たい!」と思った作品。ふたを開けてみれば、(主演もやるけど)脇役俳優のサンジャイ・ミシュラーが脇役俳優の役をやるっていうじゃないですか!エモい!

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IMDB8.1点、2018年の釜山国際映画祭で上映済。

派手なインド映画と比べて小粒であるところとか映画界を舞台としてちょっと内幕もの感とか映画祭向けな作りではあるけれども、映画祭向け特有のとっつきにくさはなく、いつの間にか主人公のこれまでとリアルタイムの生きざまに吸い込まれていく。

 

冒頭で"主人公が今まで演じてきた脇役"って扱いでちょっとずついろいろな格好が出てくるのコスプレ感覚で楽しかったです。

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現役のころの彼の仕事のスタイルは、一つひとつの映画に全力投球するのではなくて、たくさんの仕事をこなすことが優先事項だったのかもしれない。499本もの映画に出ていながら人に教えてもらうまで自分の出演本数を把握していなかったから。昔となれば今みたいにインターネットに記録されるようなこともなかったから(スディールはIMDBの記録を見せてもらってやっと知った)、本数に執着してなかったら把握してない事もザラにあるかもしれないけど。

主演と同じくらい映画には不可欠な存在なのに、実際はなかなか注目されないし大事に扱われにくい脇役俳優(スター制のインドは思ったよりその傾向が強い場合があるらしい)。「Just enjoy life, aur option kya hai?(人生楽しめ、他に良い選択があるか?)」という代表的なセリフを持つスディールはまだ世間に知られている方かもしれない。でもそんな彼でも俳優業は楽な道ではなかったし、役そのものが不名誉なものとして彼の私生活に陰を落とすこともあった。

 


全てがめっちゃよかったな~しみじみ。人生の終わりに差し掛かった覇気のない主人公が新たな目的を見つけて動き出すのはワクワクするし、最後に見つけた自分の大事なものも良かった。今までに酸いも甘いも知っているであろうに、若く見せようとカツラ被ったり派手な格好としたり、大人げない行動を取ってしまうのも、ある意味人間らしくて好き。それに、今の隠居生活で解決したかと思っていたいくつかの小さな事柄が俳優復帰によってまた浮上してきてわだかまりになる。

悪者を倒したり地球を救うことじゃないけど、観客側は彼の小市民的な存在に少し自分を重ねて、哀愁を感じたり、希望を抱いたりする。彼の代名詞のような「Just enjoy life, aur option kya hai?」は彼の人生のようでもあり、真逆の道のようでもある。

 

いつもとぼけたおじさんの役をやるサンジャイ・ミシュラーが好きなんですよ私は。もちろんいつもとぼけたおじさんだけではないけども。『Dum Laga Ke Haisha』のパパ役とか好きですわ。

ディーパク・ドーブリヤールとのカツラキャラ2ショット。そういえば2人とも『プレーム兄貴、王になる』に出てたねぇ。

ディーパク・ドーブリヤールは気持ちイケオジポジションだった。

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脇役俳優に光を当てた物語。でも脇役俳優だけでなく、映画スタッフにも当てはまるし、何かの歯車となって懸命に生きてきた人への物語でもあると思う。とにかく、時に優しく時にビターなストーリーがエモーショナルで結構オススメです。

タイトル『Kaamyaab』には「Har Kisse Ke Hisse」が付いてます。「Har Kisse Ke Hisse Kaamyaab」の直訳は「全ての物語の成功した部分」。なんかちょっと考えたくなるタイトル。(なんかもうちょっとうまく訳せそうな気もするんだけど!)

 

 

リンク

Netflixはアカウント設定で英語にしたら出てきます。

 

予告

 

「Tim Tim Tim」ノリノリなテンポ

 

「Paaon Bhaari」やさしいテンポ