インド映画でちょっと休憩

インドに愛を込めて

Miss India(ミス・インディア)

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2020年公開

出演:キールティ・スレーシュ

   ジャガパティ・バーブ

   ラージェーンドラ・プラサード

   ナレーシュ

   ナヴィーン・チャンドラ

監督:ナレーンドラ・ナート

時間:136分

言語:テルグ語+英語字幕

媒体:Netflix(英語設定)

 

あらすじ

幼いころから人生の目標を持つことを教えられていたサムユクタ(キールティ・スレーシュ)は、MBAを取得し自らビジネスを興すことを人生の目標としていた。しかし、彼女がまだ学生だった間にその教えを説いていた父親(ナレーシュ)がアルツハイマーに罹り、中産階級の一家は急に不安な空気となる。

兄が卒業と同時にアメリカで働けることになるが、その直前、一家でのアメリカに移住を悲しんでいた祖父(ラージェーンドラ・プラサード)が急死する。お爺ちゃん子でもあったサムユクタは深い喪失感と共に渡米する。しかしアメリカで友人もでき、次第に元気を取り戻す。

サムユクタがビジネスを始めることに賛成しない兄アルジュン(カマル・カーマラージュ)の勧めでサムユクタは就職するが、自分自身の人生を自分でコントロールできない状況にフラストレーションが溜まっていく。また、ボーイフレンドだったヴィジャイ(ナヴィーン・チャンドラ)が彼女の気持ちも聞かずにサムユクタの家族と結婚の話を進めてしまったが、彼女はそもそも自分の目標を成し遂げるまで全く結婚を想定していなかったため彼らと衝突する。これをきっかけにサムユクタは仕事を辞め、家族の暮らす家を出、ヴィジャイとの関係に終止符を打つ。

とうとう目標だったビジネスを始めようとするサムユクタ。しかしやる気もプランもあるのに資金と協力者がなかなか得られず、早くも苦境に立たされてしまい…。

 

いろいろ

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面白かったですね。

アメリカ・サンフランシスコを拠点に、インドの国民的飲料チャイの市場開拓をビジネスにしようとする女性のお話です。

紅茶よりコーヒーで成り立っているアメリカで、どこまで食い込めるかのチャレンジ的なビジネスです。何故チャイになったかというと、おじいちゃんがお医者さんで薬膳茶を提供してたから。多分。

 

というビジネス面はありましたが、主に感じ取れたのは、女性の自立というところではなく、その先の、夢を叶えることと成功することを描いてることが大きかったです。

インド映画ってつい最近自分の足で立つ女性の話が出始めたと思っていたら、ここまで来たか!なかなか早い!

女性と言えど人生において何に価値を置くかは人それぞれで、ぶっちゃけ結婚しててもどこかに雇われてても何でも自分の希望することができれば成功ともいえるし、自立といえば自立と言えると思うんだけど、なんというか世間的に見ても「成功者」と呼ばれても違和感ないような女性を描いたのが新鮮でした。伝記や実話でもなく。

それに、家族の願いを叶えることより自分が一番叶えたいことを優先して、そのためには家族を捨てる形になってしまうこと、映画自体がそれを良し(もしくは仕方ないこと)と扱うのも、家族それぞれの意見がぶつかってバラバラになってもどちらも悪いモノとして扱わないところも、インド映画変わったな…って思いました。どういう形であれインドには”家族”や"集団"優先がイメージにあって、”個”を優先してると新しいなって思っちゃう自分がいます。

 

キールティ演じるサムユクタがとても意思の強い女性で観ていてめっちゃ気持ちいい!

個人的には正直言っていつも強く生きる女性主人公が出てくると「強くあれ」を真に受けちゃって自分も強い人にならんとあかんのかなって辟易しちゃうんだけど(個人的には強く生きることはものすごいエネルギーを使うことなので)、これはすんなり受け入れられたんだよな…なにが違ったんだろう。キールティちゃんのおかげかな?

そもそもこの映画が私は私!人は人!って感じだったからかもしれんな。

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めちゃめちゃ興味深かったのは、こういう女性が仕事で成功するって話に必ずついてくる「恋も成就!」ってところをバッサリ切ってたところ。まず結婚をちらつかせる男性はサムユクタの方から断ってたし。そしてこれといった恋人がいなくても、それを寂しいと思わせる描写が一切なかったこと。「なんだかんだ言って深い関係になる人がいないと人生寂しいでしょ?」っていう押し付けナシ~!最高!このサムユクタの生きざまから言って、彼女がそういう判断を下すことが最適解でめっちゃ好きです。この辺インド人はどういう評価するんだろうって気になります。

 

 

彼女の人生設計に大きくかかわった父と祖父は、彼女のビジネスが肝心な時に不在状態。

特に若年性認知症になってしまう父は、心身ともに健康だったらサムユクタの絶対的な味方になったかもしれないけどそうならない。存在はするけど家族会議には参加しないなど、家族でありながら第三者という立場になっていて不思議でした。この話を作った人の意思通りかはわからないけど、私は絶妙な立ち位置で面白いと思いました。よくある例に置き換えると、孫に優しいけど家長に影響力のないおばあちゃんみたいな?自分が今のサムユクタの父であることは忘れているけど、ふとした時にサムユクタの心を暖かくする言葉をくれる人でした。めちゃめちゃ現実的な話すると、あんな都合いい言葉そうそう言わないけどな…。

祖父は彼女のチャイビジネス面に強い影響を持っていて、彼女の心の拠り所でもあり、おそらく祖父も健在だったら強力な味方になっていたかもしれない。

きっとサムユクタが孤立無援になる状況が必要だったんだろうなって思いました。

 

 

テルグヒーロー映画のような暴力沙汰はゼロですが、一瞬で圧を感じてしまう商売敵にジャガパティ・バーブ氏。チャイでアメリカを開拓するなら避けて通れないコーヒー界をリードするコーヒーチェーン会社の社長。相変わらず派手なスーツが似合う!

インド人がアメリカの大きな会社の社長って言われてももうあんまり違和感ないねw リアル世界のIT企業の社長にいるもんね

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映画的過剰演出も含めていつも以上にやり手っぽさがあるジャガパティおじさんだったけど、あのビキニ女性でコーヒー提供キャンペーンのやつは女性客完全無視って感じで愚策では?って思いましたww

 

 

シビアなこと言うと、彼女のビジネスは"とてもおいしいチャイでアメリカ開拓"というところ以外は目新しいものはなく、映画ならではの奇抜なアイデアでビジネスを切り開くという描写もほぼなかったです。強いて言うなら祖父の薬膳茶がチャイのカフェでちょっとだけ出てきたくらいかな?というわけでビジネスもの映画としてはちょっと弱いですが、それを補うくらいサムユクタの生きざまがかっこよくて気持ちいいので、総合してめっちゃいいです。映画は総合芸術なので、全部足して総合点が良かったらOKなのです。マイ年間ベスト10に入れるかはわからないけど、審査員特別賞は今すぐあげたいなwオススメ!

 

リンク

予告

 

そいえばダンスシーンはなかったです。思い切りがよい。

タイトルソング ここぞというときにBGMにもなる強い曲

 

 

「Kotthaga Kotthaga」

 

おまけ

映画に合わせてチャイTシャツ着てたキールティちゃん

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他にも色々着てた。

チャイTシャツほしー!今度インド行ったら探そ