インド映画でちょっと休憩

インドに愛を込めて

サタジット・レイの世界(Ray)

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2021年公開

媒体:ネット配信(Netflix)

言語:ヒンディー語+日本語字幕

 

インドを代表する映画監督、そして多方面で活躍したアーティストであるサタジット・レイによる短編小説4編からなるWebシリーズです。

サタジット・レイって映画監督としてしか知らなかったんですが、小説も書いてたんですね…多才すぎるすげぇ。

1本の長編ストーリーではなく短編なので、4つ個別に感想書きます(シリーズ内で比較はあり)。ストーリーは1話完結でそれぞれの世界に繋がりはありません。

 

勿忘草(わすれなぐさ)

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時間:64分

出演:アリー・ファザル

   シュウェーター・バスー・プラサード

   アニンディタ・ボース

監督:スリジート・ムカルジー

「Bipin Chowdhury'r Smritibhrom(Bipin Chowdhury’s Memory Loss)」に基づく

 

あらすじ

記憶力の良さが自慢の実業家イプシットの前に、見覚えのない女性リアが現れる。

アジャンター石窟寺院で一緒に旅行を楽しんだと言われるが、いくら考えても行ったことがなかった。しかし自分の周囲の人物からもイプシットは昔そこに行ったはずと言われ、さらには他のこともうっかり忘れてしまうことが増え、イプシットはだんだん悩み始めるが…

いろいろ

主人公が序盤に発した格言的なものがそのまんまテーマになっている、少々怖いミステリー。

殺人事件が起きるとか血が飛び散る系じゃないけどなんか怖かった。パンチ強えぇよ。

最後に全貌がわかるので、2度目観たらいろいろ見方が変わるかも?わたし短編ながらも取りこぼしが多かったので一度でわからず2回観ちゃいましたw 2回観たらだいたいわかった。言うてめちゃめちゃ難解作品ではないはずなので、もちろん1回でちゃんと理解できる人もいると思いますw

 

なりすまし

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時間:52分

出演:ケイ・ケイ・メノン

   ビディター・バーグ

   ラジェーシュ・シャルマー

監督:スリジート・ムカルジー

「Bahurupi(Multi-character)」に基づく

 

あらすじ

祖母が亡くなり、遺産として特殊メイクの指南本を受け取ったインドラシシュ。彼はそれから特殊メイクの世界に没頭するようになる。人生がうまくいっていなかった彼はそれから他人になりすまし行動するようになるが、そのせいで彼の運命は思わぬ方向へ走り出し…。

いろいろ

役者とドラマを楽しむ感が強かった作品。そういう意味でわくわくしました。ストーリーは4作品の中で一番ファンタジー色が強かったです。こういうリアルに近い世界観の中でリアルには起き得ないはずのことが起きるっていう際どい感じ好きですね。

特殊メイクというところでケイ・ケイ・メノンが女装するのを勝手に期待してしまいましたがそれはなかったです…おじさんにだけ変身してました。変身願望を叶えるのではなくてそれぞれの目的があって変身してたから、そもそも女装は必要なかったみたいですね。集団の中にいるとき思ったけど、ケイ・ケイ・メノンって背高い…?

こちらも少々怖い話なので、2作連続して怖いのが続いて背筋が凍ってきました…。ホラーじゃないけどホラーみたいに怖くなった。1話目と2話目ともにベンガル映画を中心に活動する監督です。

 

騒ぐほどのことじゃない

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時間:53分

出演:マノージ・バージパイ

   ガジラージ・ラーオ

   マノージ・パーウワー

監督:アビシェーク・チョーベイ

「Barin Bhowmik-er Byaram(Barin Bhowmick's Ailment)」に基づく

 

あらすじ

盗み癖があった歌手のムサーフィル。移動中の寝台列車でかつて盗みを働いた男に再会する。いつ自分を思い出してしまうか恐れ始めるムサーフィルだったが…。

いろいろ

これ!!4作品の中で一番面白かったというか一番私好みだった。オチまで観たらコント観てる感覚だった。ものすごく綺麗なオチ。前2作がちょっと怖い話だったので(←面白かったけど)、ここでテイストが変わってちょっとホッとする部分もあったっていう順番的なのもあるかもしれないw ガジラージ・ラーオがプイッて拗ねるところが今季イチ可愛いのでめっちゃ観てほしいw

マノージ・バージパイがガザル歌手っていうのエモすぎませんか…??世界観がムスリムみたっぷりなところもよかったです。

監督は『Ishqiya』『Udta Punjab』等のアビシェーク・チョーベイ。

 

スポットライト

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時間:63分

出演:ハルシュワルダン・カプール

   チャンダン・ローイ・サーニヤール

   ラーディカー・マダン

監督:ヴァサン・バーラー

「Spotlight」に基づく

 

あらすじ

人気イケメン俳優のヴィクラムはデビュー以来変わり映えしない役について批判され落ち込んでいた。仕事のために泊まったホテルでは以前マドンナが泊まったとされる部屋を選んだが、早々にディディに部屋を取られてしまう。ディディは最近ブームになっている教祖で、ヴィクラムの周囲も彼女に心酔していた。部屋を取られたうえ、自分の人気の陰りとは逆に人気を集めているこの宗教団体に嫌気が差した彼は、ホテル内で色々抵抗を試みるが…

いろいろ

燃えよスーリヤ!!』で何かと個性的な映画を作り出したヴァサン・バーラーの監督作品。原作がサタジット・レイの作品だからかさすがに『燃えよ~』ほどふざけた作品にはなってないけど面白かったです。

人気俳優とはいえ序盤から既に絶好調とは言えずちょっとかわいそうな状態の主人公にこれ以上可哀想なことは起きないでくれ…って1話目と2話目をまだ引きずった状態で観てましたが、そういう意味では心臓に悪いことはないのでご安心くださいw

宗教者が神聖なものか逆にインチキなものか、その扱いが『なりすまし』『スポットライト』でほぼ真逆なの、まとまった作品の中で起きてるのが面白かったです。

デビュー2作品がコケまくってしまっていたハルシュワルダン・カプールがそのあと脇役や配信作品で模索してる感がありますが、役者さんとして悪くはないと思うのでこれからも頑張ってほし~。

 

 

まとめ

4つのなかでどれが一番楽めた、とか脳内で順位をつけるっていうことはありますが、4作品ともクオリティよくレベルが高かったです。お勧めしたい。4作品ともちゃんとオチがあったのも良かったです。

はやり原作のクオリティが良いのだろうか…?サタジット・レイの作品に基づく、というところがどの辺まで基づいていてどの辺から基づいていないのかちょっと気になるので原作も読んでみたいですが、全部は日本語訳されていないみたいなので、読むとしたら英語かベンガル語版かしら…。『騒ぐほどのことじゃない』はおそらく「ユニコーンを探して ─サタジット・レイ小説集」という本に「盗癖」というタイトルで収録されてるみたいです。似たタイトルの違う話だったらごめん。ちょっと本読んでみたいけど絶版になってて難しそう…。

 

おもしろかったので4話に限らず他の短編もシリーズしてほしい~!