インド映画でちょっと休憩

インドに愛を込めて

Thalaivii(リーダー)

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2021年公開

出演:カンガナー・ラーナーウト

   アルヴィンド・スワーミ

   サムドラカニ

   ナーサル

   バグヤシュリー

   ナーサル

監督:A.L.ヴィジャイ

時間:150分

言語:タミル語+英語字幕

媒体:ネット配信(Amazon Prime)

 

あらすじ

1965年──若くして映画界に入った16歳のジャヤ(カンガナー・ラーナーウト)は、そこで人気俳優MGR(アルヴィンド・スワーミ)の相手役を務める。スターとの共演のおかげか彼女は瞬く間に人気ヒロインとなり、彼女のもとには多くのオファーが舞い込んできた。またジャヤは、MGRの人柄に触れ、彼を慕うようになる。しかし彼には既に妻がいた。MGRのプロデューサーR.N.ヴィーラッパン(サムドラカニ)はMGRの評判を下げる危険があるジャヤを遠ざけようとするが、ジャヤは諦めることなくヴィーラッパンに対抗し、MGRとの関係を深めていった。

それから数年──MGRは自身の政党を立ち上げ、俳優より政治家としての活動を選択する。密かな関係であり続けなければならなかった状況に疲れ果てたジャヤはMGRの元を去り俳優としての活動を続ける。その後彼女は政府主催のイベントでステージパフォーマンスをした際、またMGRに再会し、思い出話に花を咲かせる。MGRは彼女を政治の世界に誘うが、政治が嫌いなジャヤはそれを拒否する。

しかしある日、ジャヤは貧困にあえぐ少女と出会う。そこで全く機能していない福祉を目の当たりにした彼女は、手を差し伸べるべくMGRの政党に参加することを決め…。

 

いろいろ

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俳優、そしてタミル・ナードゥ州首相として絶大な支持を受けていたジャヤラリターの伝記映画です。

最近亡くなったので、生前の彼女の活躍はインドの人々にとって記憶に新しいところ。「アンマ(お母さん)」との愛称で呼ばれるほど慕われたジャヤラリター。歴史上の人物や古の偉人というよりは、今でも支持され続けている人を扱っている内容です。

インドの有名人の伝記映画…となると、またもや私はほとんど知らない人物でした。名前は聞いているし、2016年に亡くなった時ざわざわしていた様子も遠巻きながら知ってる。ただ俳優として活動していたころの映画を観てたり、政治家としての活動をリアルタイムで知ることはなかった(インドの政治に疎いので)ので、この映画に描かれていることはほぼ初めて知ることでした。

おそらく映画はジャヤラリターの人物像がイメージ出来ている人向けに作っているはずです。"知られざる偉人"ではなく。なのでレビューはジャヤラリターを知ったうえで掻くべきかなと思いますが、その辺はしゃーないかなって。あんまり知らない立場で開き直って書こうと思います。文字での予習は多少やりました。

 

驚いたところは、見ようによっては彼女の負の部分にもなり得る不倫関係を中心に描いていたことです。生涯独身だったジャヤラリターは、MGRをメンターとしていました。彼女の16歳から40歳の頃をなぞったストーリーで、2人の関係を中心に据え、映画ではラブストーリーものと言えるくらいに恋愛描写が多かった印象です。お互い独身だったとか、結婚したとかでもない関係で、公然の秘密だとしても映画で描くのと描かないのはだいぶ違う気がする。身内が作ったNTRの伝記映画だと不倫的なところかなり端折っていた記憶。

一方で、問題を避けたい意図があったかは不明ですが、ジャヤラリターの所属する政党AIADMKは名称を変えてあったような気がします。(変わってなかったらごめんなさいスルーして)ちなみにAIADMKはヴィジャイ主演『Sarkar』で制作側と対立が起きた政党です。

他の伝記ものの例に違わず、実際の出来事から改変は多少なりともあるそうです。ただまあ先にリアルの世界で知っていたことは少ないから史実と創作に区別をつけるのは難しいし、伝記ものの場合映像で観ちゃうとそれが本物に見えてしまうのよね…危ない。

 

 

知らないなりに楽しめた点も書いてこう。

まずは俳優が主人公の映画だとまずナチュラルに色んな衣装やヘアスタイルを楽しめるのが最高。60年代ファッションめっちゃかわいい。頭頂部にボリュームあるヘアスタイルほんとかわいい。

基本やせ型のカンガナーは特殊メイクを施したそうです。若い頃のシーンから普段のカンガナーよりぽっちゃり気味でした。途中ちょっと痩せた印象でしたが、終盤になるとさらに増量でした。逆に年齢による見た目の変化はあんまり感じなかったです。

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撮影中とか公開された映画とかのダンスシーンに、主人公の気持ちを乗せて語られるのとてもいいですね。撮影風景や劇中劇がストーリーとシンクロする。そもそもキャラクターの気持ちが歌や踊りに乗ること自体はインドにおいてよくある手法なので、それを主人公たちが"演じる"ことに違和感がないんですよね。これがインド映画文法の強いところだと思います。

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その後の彼女の政治手腕を彷彿とさせるような、若いころからの世渡り描写は面白かったです。スカッとするレベル。プロデューサーに売られた喧嘩をスクリーン上で返しているシーンもよかったです。もちろんこうした一番の理由が主人公の職業が映画女優だからってところだとは思いますが、ここも映画を愛する国がやるとさらにパワフルに感じ取れました。

 

力強い台詞も色々ありました。

敵対してた人と仲直りして手を組むとき、お互い謝るわけでもなく「司令官なしに、どうやって勝てばいいの?(←英語字幕)」って相手の能力ごと受け入れるのカッコイイです。

 

ちなみに第二弾があるそう(だから彼女が亡くなるまでではなく半生になってた)なのですが、今現在その企画はどうなってるかわからない。後半が描かれるとしたら彼女の州首相の手腕とかライバル政党との争いが中心になるのかな?

 

リンク

「Kannum Kannum Pesa Pesa」ジャヤはバラタナティヤムとか古典舞踊の名手で、パフォーマンスゲストとして披露するシーン

 

「Unthan Kangalil Ennadiyo」映像的にはこの辺の時期が一番楽しいかな

 

「Unakaana Ulagam」こっちは政治家としてのシーン

 

おまけ

これは日本語字幕が付いてどこかの映画祭で上映ありそうな気がしている