インド映画でちょっと休憩

インドに愛を込めて

SUMO(相撲)

2025年公開

出演:シヴァ

   田代良徳

   プリヤ・アーナンド

   VTV・ガネーシュ

   ヨーギ・バーブ

   サティーシュ

監督:S. P. ホシミン

時間:115分

言語:タミル語+英語字幕

媒体:ネット配信(Simply South)

あらすじ

ビーチ沿いでサーフショップを営むシヴァは、いつか彼女とオーストラリアへ移住する夢を描いていた。そんな彼の店のビーチに、ある日突然ふんどしを巻いた巨体の男が漂着する。
男は言葉は通じないがシヴァの手は握って離そうとしない。しかも、記憶を失っていて、知能は赤ちゃんレベルまで退行してしまっている様子。

しばらく面倒を見ることにしたシヴァ。ちょっとしたトラブルに困ったり、大食い大会に出場させたり、「ガネーシャ」という名前をつけて神像の代わりをさせたり、奇妙な日々を過ごしていく。
やがて彼が日本人の力士であったことが判明。しかもなぜか命を狙われているらしい…?これも何かの縁。シヴァは彼を連れて、日本へと向かうことを決意するのだった。

いろいろ

出会うはずのない出会いに"発想力"が勝るところから始まる、異文化交流の熱いグルーヴ

 

『SUMO』は、その名の通り“相撲”をテーマにしたコメディ映画。
一見「ネタ映画かな?」と思いきや、実際には相撲への意外なリスペクトと文化ミックスの面白さが詰まった快作でした。

 

2019年の撮影開始からコロナを挟んで何度も公開延期になっていた本作ですが、ついに日の目を見ることに。お蔵入りしなくて本当によかった!

田代良徳さんなど日本人俳優が登場し、「東京」として描かれる富山ロケも含め、日本の存在感がちゃんとあるのが嬉しいポイントです。

一時期Twitter界隈でも予告編が話題になったことを覚えている方も多いのではないでしょうか。盛り上がりはTVでも取り上げられたほど。突如タイムラインに現れた「力士がインドのビーチに漂着してくる」「寿司に釣られる力士」という衝撃的な映像に、誰もが「何これ…?」と目を奪われ…。この“漂着”という奇抜な導入、まさにこの映画の最高の瞬間のひとつ。日本人では思いつかなさそうなあまりに突飛で突き抜けている設定に「その発想どこから来た!?」と笑ってしまうと同時に、強烈に惹きつけられます。

 

しかし笑いだけで終わらず、相撲に関する描写は案外と丁寧。相撲のシステムや背景的な解説、相撲が「神聖なもの」とされていることまで説明されていて、制作者たちが相撲というスポーツを表面的・絵的な面白さで捉えるのではなく、ちゃんと文化的側面としての相撲を理解し広めようと努力しているのが伝わってきます。

ただし、惜しさも残ります。
この「力士が漂着する」という最高のネタ、もっと脚本全体で膨らませていれば、もっと記憶に残る異文化エンタメに底上げできていたはず。アイデアのポテンシャルが非常に高いだけに、展開がややユルすぎたり、周辺設定を活かしきれないまま終盤に突入するなど、ドラマ部分の掘り下げ不足が少しもったいなく感じました。終盤より前の段階にもうちょっと観客の心をグッと掴むストーリーがあれば最高だったんだけど。その点で言えば、東京国際映画祭で上映された『相撲ディーディー』の方がスポーツ映画として見応えあり。
まぁ正直この規模感のタミル映画だと普通によくあるクオリティではあるんで、期待しすぎず軽く構えて観るのが正解かもしれない。

 

テンポに関しては、前半はインド映画らしい“のんびりスタート”で、メインプロットがヌルっと始まるのが特徴。後半にはしっかり熱量のある展開が待っているので、「我慢して観たら意外とアツい」という嬉しい裏切りもありました。(前述のようによくあるレベルで私的には大作より肌に合ってるのでそんなに我慢はしてないけれどもw)
テンポ感を日本の作品で例えるなら『侍タイムスリッパー』のような、ちょっと気の抜けたユルさが全編に漂っていて、良く言うと牧歌的。

演出面では、たぶん日本で撮影した映像に後から格闘技風の編集を施したのでしょう、K-1のような演出が相撲シーンに炸裂。タイトルマッチ的ロゴ、試合前の文字テロップなどが多用されていて、相撲を見慣れている日本人としては「これは別競技では…」と戸惑いますが、逆に言えば、相撲を知らない観客にも迫力が伝わる“翻訳”として機能していたとも言えます。そもそもメインターゲットはインド人なので、100%忠実にやらないといけないよりは、その人たちが理解しやすい演出の方がいいかもしれない…。

 

そして最近インド映画ではおなじみの、外国語(今回は日本語)をしゃべっているところに、上からタミル語吹き替えがかぶさっている箇所あり。せっかくなので、日本上映の時にはぜひ“日本語原音バージョン”で観たいところ(笑)。


『SUMO』は、「力士がインドのビーチに漂着する」というインパクト大なネタに、相撲文化への誠実なリサーチと、インド映画らしい熱量を注いだ異文化交流コメディ。
ただし、そのネタのポテンシャルをすべて使いきれたかといえば、正直まだ伸びしろはある――あまり高クオリティを期待しすぎると拍子抜け喰らうけど良いところもある、そんな“惜しい名作候補”でもあります。

それでも、SNSで話題になった衝撃の予告に惹かれた人も、なんとなく気になっていた人も、ちょっとズレた日本描写に笑いながらなんだかんだちょっと感動できる一作として、もしくは突然変異的なネタとして、観て損はないはず。
相撲とインドの突拍子もない発想の相性、意外と良いです。

 

リンク

 

案外ダンスシーンは少なかったですわ

「Ganapathy」