
2025年公開
出演:ランヴィール・シン
R・マーダヴァン
アクシャイ・カンナー
アルジュン・ラームパール
サンジャイ・ダット ほか
監督:アディティヤ・ダール
時間:206分
言語:ヒンディー語ほか+日本語字幕
媒体:スクリーン(新宿ピカデリー)
あらすじ
1999年のインド航空814便ハイジャック事件、そして2001年のインド国会議事堂襲撃事件。相次ぐテロに揺れるインド政府は、パキスタン・カラチの危険地帯リヤリの街を拠点とする犯罪組織への潜入作戦「ドゥランダル作戦」を極秘に開始する。
任務を託されたのは死刑囚ハムザ(ランヴィール・シン)。身分を偽って組織に潜り込んだ彼は、抗争と裏切りが渦巻く裏社会で生き延びながら、テロ計画の背後関係を探っていく。やがて彼は組織の中枢へ近づくが、その先には国家規模の陰謀が待ち受けていた。
任務を優先するのか、自らの信念に従うのか。極限状況のなかで、ハムザは重大な決断を迫られるのであった。
いろいろ

観る前、特にあまり情報を入れずでの印象ではスパイ映画やアクション映画の形をしていたけれど、観終わってみるとむしろ戦争映画として観たほうがしっくりくる作品でした。あまりにも国家、そして対立を浮き彫りにしている。
たかがエンタメ、されどエンタメ。人々に楽しみを提供しながら政治的主張を浸透させる力がインド映画にはある。この作品もまさにそういう映画だと思う。
まあ言うて、インドという国の特殊性もあり、インド映画はもうベースに愛国心があって、息をするレベルで愛国心を叫ぶ作品が多いので愛国心については今更驚くものではないけれども、私がこの映画を観て改めて思ったことをつらつらと書きます。(ちなみにパンフやネットに載ってる解説や豆知識などこの映画に関する情報をほとんど読まずに書いているので、そもそもこの映画の知識的な部分で間違いがあったらすいません。先に読むと書く熱量が消えてしまうので、これ書いたら読みますw)
作中で本当に敵として描かれているのはテロ組織だけではない。もっと大きな単位としてのパキスタン、そしてイスラーム教徒そのものに向けられた視線「敵視」を感じた。隣国への憎悪や警戒心を煽るプロパガンダ映画としての側面はかなり強い。
もちろん、パキスタンを敵国として描く映画自体は今に始まった話ではなく。インド映画では長年にわたり作られ続けてきたし、その都度ヒット作も生まれている。ただ近年は、そうした作品を取り巻く政治環境が以前(今から10年位以上前)とは少し違うように見える。モディ政権下では特定の映画が娯楽税免除の対象になったり、公的支援を受けたりする一方で、政権に批判的な作品には圧力がかかるという話も聞こえてくる。
政府がそうした立場を取る以上、映画関係者全員が同じ思想でなくても、結果としてプロパガンダに寄り添う作品のほうが公開しやすく、市場価値も得やすい環境が生まれるのは自然な流れでしょうね。
もっとも、この手の作品がヒットしている以上、観客に受け入れられているのも事実。すべてをモディ政権の影響だけで説明するのは無理がある。ただ、この流れが政権交代後も続くのかどうかは少し気になっている。
個人的には、外国人という立場から冷静に観ると、こうした思想を前面に押し出した映画はあまり進歩的だったり洗練されているようには見えない。もちろん日本人の自分が何か言えば「外野のお前に関係ない」と言われそうではあるのだけど、それでも作品の中で描かれるパキスタンやイスラーム教徒への視線に違和感を覚えたことは忘れずにいたい。
特に気になったのは、監督自身がフィクションを含む作品であることを強調しているにもかかわらず、批判の対象が単なるテロ組織に留まっていない点。組織の背後にいるパキスタン側の体制人脈を印象的に描く場面もあり、結果として国家全体やその代表的組織を批判する構図になっているように感じた。
また、インド側の人物たちは「インド万歳(Jai Hind)」と愛国的な言葉を口にする一方で、敵側のギャングや裏社会の人物たちは「アッラーは偉大なり(Allahu Akbar)」と宗教的な言葉を叫んでいる。パキスタンには「パキスタン万歳(Pakistan Zindabad)」という一般的な愛国スローガンがあるにもかかわらず。これはインド側を愛国者、敵側を宗教的狂信者として描く演出の一つなのではないかと思いました。
インド映画は常に変化している。過去にもパキスタン・イスラーム批判ムードが高まった時代はあったし、逆に融和を理想として描いた時代も確かにあった。今後もこのまま対立を煽る方向へ進むのか、それとも別の流れが生まれるのか。映画好きとしては気になるところである。モディ政権は当初思ってた以上に続いているけど、たぶんきっと永遠ということはないと思うし…その時がどうなるのかなっ楽しみだったり不安だったり。
役者陣は主役級が揃ってかなり豪華。

R・マーダヴァンは最初まったく気付かなかった。かなりおっさん化していてびっくり。最初ほんと舞台とかで活動してたあまり有名じゃない年配俳優さんかと思ったのよ…特におでこ回りの印象が強く…。マーダヴァンは自分の中ではいつまでもダンディなお兄さんのイメージだったので少しショックだったけど、それだけ役作りで変身しているということでもある。こういう気付かないレベルで化けてくれる役者は映画にサプライズをもたらしてくれるのでやっぱり好きだな~。
映画全体的に毛量がすごかったのも印象的。ひげも髪もモリモリ。特にランヴィール・シンは毛量で画面を支配していた気がする。年数と共に毛が伸びてて面白かった。ランヴィールが演じるハムザは続編で毛量少ない姿で過去編??が観れるみたい??で、ハムザの掘り下げ楽しみ。
アルジュン・ラームパールも毛で顔が見えにくくて、作中では最後まで気付かなかったレベル。こちらは時折見せる金歯が印象的w
事前にアクシャイ・カンナーがかなり評判になっているという話を見かけていたけれど、確かに印象的な場面が多かった。注目されるのも納得。ただ、自分は終始マーダヴァンショックを引きずっていたので、そこまで集中できず(笑)。もし事前情報なしで観ていたら、たぶん一番印象に残ったのはアクシャイ・カンナーだったと思う。
泥臭いタイプのスパイアクションとして観れば派手で見応えがあるし、豪華俳優陣の熱演も楽しめる作品。ただ、その裏には現在のインド社会や政治状況が色濃く反映されており、単なる娯楽映画として片付けるには重いテーマも抱えてる。
映画そのものの面白さとは別に、「今のインド映画が何を描こうとしているのか」を考える材料としても興味深い一本でした。
抱えている思想にかなり引っ張られた印象になってしまったけど、映像エンタメとしては一級品。それに、最初から続編が提示されている以上、続編を観てみないと完全にこの映画を理解したと言ってはいけない気もするし、伝わってくる内容も180度反転するかもしれない(今のところ続編観てません)。気になるハムザの過去もそうだし、映画がすべて完結するところを見届けていきたいと思いました。
リンク
音楽よかった。好み
「Dhurandhar - Title Track」
「Ez-Ez」
「Shararat」