インド映画でちょっと休憩

インドに愛を込めて

Nadigaiyar Thilagam(伝説の女優 サーヴィトリ)

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2018年公開

出演:キールティ・スレーシュ

   ドゥルカル・サルマーン

   サマンタ・アッキネーニ

   ヴィジャイ・デーヴァラコンダ

監督:ナーグ・アシュウィン

言語:タミル語+日本語字幕

時間:167分

媒体:スクリーン(キネカ大森スクリーン1/インディアンムービーウィーク2020)

 

あらすじ

バンガロールで、女優サーヴィトリ(キールティ・スレーシュ)が昏睡状態で病院に運ばれてきた。それから、彼女は目覚めないまま1年が過ぎてしまう。

新聞記者のワーニ(サマンタ・アッキネーニ)はそんな彼女の取材記事を任された。あまりサーヴィトリのことを知らないワーニは小さな記事の仕事にやる気が出なかったが、サーヴィトリの家を訪ねてきた年配男性の話を聞くうち、気持ちに変化が現れる。

ワーニはサーヴィトリが倒れる直前に書いたとみられる手紙を見せてもらう。そこにはシャンカライヤという人物の名前が記されていた。ワーニはこのシャンカライヤという人がサーヴィトリを深く知る人物だと推測するが……。

 

いろいろ

テルグ・タミル映画界で燦然と輝く名女優サーヴィトリを辿る伝記映画です。

 

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もとは『Mahanati』というタイトルのテルグ映画で、『Nadigaiyar Thilagam』はそのタミル語吹き替え版。タミル語話者に合わせて若干の変更がされています。

50年代~70年代に活動した彼女は大きな支持を得て、評価もされています。

一方で45歳の短い生涯や晩年の不遇も知られています。

私はこのあたりの話をどこで知ったんかな…覚えてないや。まあいいか、そんな彼女のお話です(あらすじは書いてたらワーニがメインぽくなっちゃいましたがサーヴィトリがメインです)

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サーヴィトリの役は我らがキールティちゃんだぜ!

伝説級の女優を演じるとはなかなかプレッシャーかかってただろうなぁ…

 

2018年に公開された本作は評判も良くヒットもしたそうです。公開時日本でも上映されて評判良かったのは記憶している。

(インディアンムーヴィーウィーク公式サイトは「日本初上映」としていますが、それはタミル版であってテルグ版は上映済です)

 

…が、私はあんまりハマんなかったかな~というのが正直な感想です。

多分原因は作品自体の出来というよりは私個人の感覚に因るところだと思います。その辺は良かった点と交えながら書いていきます。あまりマイナス評価を読みたくない人はここらへんで回り右がよろしいかと(いつものクッション的ポイント)

 

サーヴィトリが倒れ、ワーニが取材をする"現代"であるところの80年代の映像がすこし不鮮明で、もっと昔80年代以前の回想シーンが鮮明だった逆転演出が面白かった。

80年代のは当時の技術で出せる映像を再現したのだと思う。最初ちょっと映像の乱れか、一昔前の映画みたいに変なところでピントが合ってないのかと思っちゃったwごめんw

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(これは鮮明な写真)

ワーニのパートはサーヴィトリが映画界のスターだった頃を知らないワーニを中心に、人生の節目にあるワーニの話や、謎の人物シャンカライヤを追うミステリー風味。

サーヴィトリの人生の大筋は実在の人物である以上ある程度固定なものなので、どこを取捨選択、何の要素を追加するか、どう見せるかってところで作られた架空の物語です。

 

サーヴィトリの映画は本作にも出てきた『Mayabazar』を観ただけの経験値しかない私ですが、それだけでも知ってる映像の再現が観れて楽しかったです。

↓このシーン

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もちろんほかにもいろんな映画のシーンとか舞台裏とか出てきて、サーヴィトリの映画に親しんでる人はその辺も観ていて楽しいんだろうなぁって思います。

 

 

サーヴィトリの人生が"事実"である以上、そこにあまり感想というものが発生しないんですが(私の場合はわりといつもそう)、

サーヴィトリのキャリアが成功すると結婚生活が破綻してしまうという女性あるある描写が辛かったです。

女性とキャリアを描く映画はいつもそんな感じの描写が出てくる。これが男性が主人公の映画だと「私と仕事どっちが大事なの」って言ってくる恋人が出てくると笑い話みたいになったり、そもそも均衡が崩れる割合が減るので、私の中で女性はキャリアを求めるなら他を諦めないといけないという強迫観念みたいになってきて辛い…。男性は男性でキャリアの失敗=人生の失敗みたいに描かれることが多いからそれはそれで辛そうだけど。

もちろんこの映画の本質はそこじゃないのはわかってる。そんなのこの映画の一部でしかない。実在のサーヴィトリの生き方を批判するつもりも全くない。でも映画でそういう種類の辛い感情を抱きたくなかったってだけ。

 

サーヴィトリは映画に描かれる通り、ジェミニ・ガネーシャンが結婚した妻の1人。唯一の妻ではないです。

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ジェミニ・ガネーシャンと結婚したことが彼女の人生に陰りが生まれる一因のように描かれています。当時のインドは重婚が認められていた(!!)から違法ではないけれども、やはりだいぶ白い目で見られる状況にあったみたいだし、そもそも妻がいる身で若い女の子に手を出すジェミニ・ガネーシャンにわりとイライラする…。いやジェミニ・ガネーシャンもタミル映画界では伝説級な人物だけど、この映画だと女性関係はルーズだし、キャリアも落ち目な時代だったし、かなりダメダメな人だった…描写について文句言われないのかなーって思ったら、案の定親族から文句出たっぽい…(文句言われるのは伝記映画あるある)。まあ普通にイライラするくらい女性関係はダメなキャラクターだったけど、彼がデートの時にサーヴィトリの心の穴を埋めてくれたシーンはほんとにいい人だなって思いました。

映画だとその私生活から「恋愛王」って言われてたけど、その呼び名はそもそも彼がロマンス映画の出演で地位を築いてたからなのもあるらしいし、実際どっちなんだ?

 

 

私の好きなチャイくんが出てます。

ANR(アッキネーニ・ナゲシュワラ・ラオ)よかった。よかったというか孫のチャイくんがやってるから私が嬉しかっただけだけど。スターのANRを前に仕事そっちのけでキャッキャするサーヴィトリめっちゃ可愛かった。

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本作はテルグ語で観るべきだと思いました。だってタミル語を理解できないというエピソードが挟まれるテルグ語話者のサーヴィトリが初っ端からタミル語を喋ってるのが(映画の構造上仕方ないとしても)違和感があるなぁと。日本語字幕が付いた以上タミル語版に意味はあるけど、映画祭を離れて英語字幕版しか観れない環境にあったら迷いなくテルグ語版にすべき。タミル映画専用に撮ってなくて口の形が合ってないシーンもある。

 

 

伝記は真実と虚構の区別がつかないから戸惑ってしまうんですよね。物語として観るのが一番健康的なのだろうけど、実在の人物がいてそれが映像になっている限り、観たものを事実として受け止めてしまう脳と、どう率直に撮ったとしても脚色や誇張が含まれてしまうと考えている脳が喧嘩してしまうので。

伝記マンガだと好きだから自分でもよく分からんのだけどね。
いっそモデルどまりの偽物の話だったり、ドキュメンタリーだったりした方が合ってるかもしれない。
あと個人的には映画に真実は求めてなくて、作られた物語を観たいと思ってるのかな、って最近感じ始めました。だから私には向いてないなぁ、と今までいくつかインドの伝記映画を観てきて思うのです。中には予想に反して面白かったのもありますが、心のハードル高めかもしれません。なので私がここであまりいい評価をしていなくても、影響されずに観ちゃって欲しいなって思います。

 

リンク

「Thandhaay」この先の展開を知ってたので気が気じゃなかったんだけど、シーン自体は可愛くていいですね

 

「Mauna Mazhaiyilae」

 

「Mahanati」タミル版が見つからんからテルグ版貼っちゃう

このヒーロー映画みたいな勢いのある音のこの歌が一番好きですね

 

おまけ

サーヴィトリの夫ジェミニ・ガネーシャンの三番目?の奥さんの娘(ややこしい)にボリウッド女優レーカーがいます。

ちなみにジェミニ・ガネーシャンの葬式には彼女は出席しなかったこともあり、父親との関係はよくなかったって言われてる。

私は何作か観てるレーカーの方が馴染みある。レーカーが生きている間にレーカーの伝記映画がつくられてほしいと思ってる。
レーカーは以前アミターブ・バッチャンと不倫関係にあったとか、唯一の夫は自殺したとか、めちゃめちゃ映画みたいな人生送ってんじゃん、なんかいつか作られそうな気がするけど、縁もゆかりもない人が脚色するなら、レーカー本人監修付いたやつが観たい。でもレーカーはそういうパーソナルなこと語るのは好きではないらしく、作られなさそうだなって思ってる。