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【インド国内リメイク談】Durgamati - The MythをBhaagamathieと比較してみた

ヒンディー語新作映画『Durgamati』を観ました。リメイク元映画『Bhaagamathie』を復習で観た直後の鑑賞だったので、今回はいつもと趣を変えて、比較する形で紹介したいと思います。

 

この先、『Bhaagamathie』か『Durgamati - The Myth』を観たことある人にはもう片方のネタバレがあります。観たことない人にはありません。

 

作品データ

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2020年公開

出演:ブーミ・ペードネーカル

   アルシャド・ワルシー

   ジーシュ・セーングプタ

   マヒー・ギル

   カラン・カパーディヤー

監督:G・アショーク

言語:ヒンディー語+英語字幕

時間:155分

媒体:Amazon Prime

 

あらすじ

州では最近、神像の盗難が相次いでいた。政治家イーシュワル・プラサード(アルシャド・ワルシー)は、6カ月以内に神像を見つけ出せなかった場合辞職すると宣言する。民衆から支持を受けるイーシュワル。しかしサタークシー(アーシャー・サラト)をはじめとする警察は、イーシュワルこそが容疑者ではないかと疑っていた。またイーシュワルは権力を使って不正を働いている疑いもあった。しかしある程度の捜査は既に終わっており目ぼしい証拠もなく、残された糸口はいままでイーシュワルと一緒に仕事をしていたチャンチャル(ブーミ・ペードネーカル)への尋問だけであった。チャンチャルは元インド行政職員で、現在は殺人罪で収監されていた。

尋問は秘密裏に計画されており、世間に知られないようチャンチャルは郊外の村にある古びた館バーガマティ城に連れてこられる。しかしこの館には呪われた古い話があり、村人も容易に近づかない場所であった。チャンチャルはここで昼間尋問を受け、夜は一人で過ごすことになるが、その最初の夜から、彼女の周りでは得体の知れない現象が起こり始め…。

 

比べてみた

冒頭にちょこっと書いた通り、『Durgamati - The Myth』は『Bhaagamathie』をもとにしたリメイク作品です。 テルグからヒンディーにリメイクされました。『Durgamati - The Myth』はヒンディー圏のプロダクションが指揮を執り、監督はオリジナルから続投でした。

 

結論から言うと、『Durgamati - The Myth』は『Bhaagamathie』とほぼ同じ話でした。上のあらすじは前回書いた『Bhaagamathie』のレビューから持ってきたんですが、登場人物名以外ほぼ変えてません。それでも矛盾が出ないくらいには一緒です。

リメイクだから同じ話になるのは当たり前なのでは?と思われる方もいるかもしれませんが、インド国内リメイク(海外にも当てはまるか…)にはいくつかのパターンがあります。「ほぼそっくり」「土台は同じだけど演出が全然違ってほぼ別の映画」「結末が違う」など。演出が全然違うのは南インドからヒンディーに輸入されるときによく遭遇します。めちゃめちゃヒンディー映画っぽいからてっきりオリジナル映画化と思ってたら南インドにオリジナルがある…とかよくあります。今回は「ほぼそっくり」。

オリジナルとリメイクに違いが出てくることに対しては、どれもイイ・ダメという次元の話ではなく、制作陣がどういうコンセプトで作りたいかによる違いなだけだと思います。そもそもオリジナル映画の言語とリメイク映画の言語は異なり、同じ国といえども観る相手が異なります。インド国外に暮らす外国語話者がインド映画を観ようとした次点ではどちらも等しく観る機会があることも多く「見比べ」も可能ではありますが、そもそも国内の観客または母語がその言語の人を第一に想定しているはずで、テルグ映画はテルグ語圏、ヒンディー映画はヒンディー語圏としてほぼ完全に住み分けがされています。(バーフバリのヒットからローカライズの境界線が薄くなったとはいえ、全国区公開されるとしても音声吹替で別バージョンが作られてこそなので音声言語を跨いでまで観ることは一般的ではない)

なので、オリジナルとリメイクがどう繋がっていたとしても、そこに良し悪しはなく、単純にそれぞれの映画の出来が勝負ということになると思います。

リメイクを作るうえでのコンセプトで「オリジナルをそのまま持ってきても違和感ないからそのままいこう」とか「オリジナルがいいからあまり変えずにいこう」とか「公開する地域の雰囲気に寄せたものを作ろう」とか「原作を活かしつつ、新しいモノを作りたい」とか色々考えた上で決められたものかと思います。『Durgamati - The Myth』はその中でオリジナルを活かすのを採用したパターンかな。おそらくプロデューサーたちの意向次第で監督を別の人にもできたと思いますが、監督が『Bhaagamathie』と同じG・アショークが就いているという点も、オリジナルから大きく変えようという意図はなかったためと思われます(まぁ製作開始までどういうやりとりが行われたかまではわからんですが…)。ちなみに監督が同じリメイクだと、プラブデーヴァ監督の『Nuvvostanante Nenoddantana』と『Ramaiya Vastavaiya』、A.R.ムルガドース監督の『Thuppakki』と『Holiday: A Soldier Is Never Off Duty』なんかがわりとそっくりなやつです。

 

 

とはいえ、100%全く同じ映画ではないので、ちょっと違ったところで面白みがあったところを書いていこうかなと思います。

ちなみに『Bhaagamathie』は約137分、『Durgamati - The Myth』が約155分ありました。正直なところ、約20分も明らかに増やしたと思えるシーンがこれといってありませんでした。数分程度ならあったけれども。なので、各シーンがちょっとずつ長くなったのかな~なんて思ってます。ものすごい暇になったらどこがどれだけ増えたのか比べてみるのもオタクの時間の使い方みたいで面白いかも。

 

主演のブーミ・ペードネーカルとアヌシュカ・シェッティ。

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主演に優しくてきれいなおねえさん、だけじゃなくてちょっと肝っ玉ありそうな華奢過ぎないブーミを連れてくるの、アヌシュカと何となく主人公のイメージが重なっていいと思います。存在に迫力出せるキャラクターは華奢すぎると難しそうですもん。

『Bhaagamathie』がそもそもアヌシュカで当て書きされたストーリーなのと2人のキャリアに10年の差がある分比較するとどうしてもブーミにはハンデがあることを考慮すると、いい線いってはいると思います。

 

どちらも役者にはあまり悪いところがないんだけど、演出が足りず怖さが物足りないというところも一緒です。『Durgamati - The Myth』で恐怖度上げてくるかな~と思ったけど変更なかったということは、監督は恐怖度あのくらいがちょうどよいと判断したという解釈でよろしいか。なるほど、そういうコンセプトならそれならそれでよし。(受け入れ態勢)

 

私が認識できた限りだと役者に続投が1人だけいました。

主人公を慕う村人上がりの警察官役にダンラージ。テルグ圏の俳優です。映画の中では比較的マスコット的で私も好きなキャラでちゃんとした役割も与えられていますが、ヒンディーの俳優に交代しようと思えばできそうなキャラなので、ヒンディー語のアテレコを用意してまで同じ人を出す必要性はないといえばない…。ダンラージは監督のお気に入りかな!?

 

他の主要人物は交代です。

主人公の義兄で過去に因縁のある警察官はムラリさんからベンガル俳優ジーシュ・セーングプタ。ジーシュ・セーングプタは『バルフィ! 人生に唄えば』や『マニカルニカ ジャーンシーの女王』に出てる俳優さんです。

主人公が館の中で生活する際におそらく世話係としてチームに入れられたのに恐怖のあまり業務拒否したぽっちゃりタイプの女性警官、ワイの好きなコメディエンヌ ヴィデュルレーカ・ラーマンちゃんから、ヒンディーもぽっちゃりめのタニヤ・アブロルに交代。ヴィデュルレーカちゃんの方が若干キャラ強いです。

ちょっと不満があったのが、主人公の夫で悲劇のヒロイン的立場シャクティの役者さん。『Bhaagamathie』のウンニ・ムクンダンはいいとして、『Durgamati - The Myth』のカラン・カパーディヤーはあんまりかっこよくない…。なんというか女性が主人公の映画の相手役っぽい人はイケメンであってほしいという願望があって(こういうポジションにイケメン俳優を置いてほしいと思うのはステレオタイプ助長みたいでごめんとは思うけど)、このポジションってあまり大物俳優でなくてもよくてオーディションで採用したらいいんじゃ?って思うのにデビュー間もないカパーディヤー家の若者が来たこと、七光り?って思ってしまったw

 

ほぼ同じストーリーですが、めちゃめちゃはっきりわかる違いが1個ありました。端的に言うと、情報が増えました。

館の警備員、脅かすだけ脅かしてあんまり役に立たない警備員wのオジサンは、『Durgamati - The Myth』になると「両腕を失っている」という設定が加わってました。オバケに腕取られたとかは全然なかったです。腕がない設定の使用例は「これ持ってて」「腕ないので持てません」みたいなようわからんギャグシーンくらい…あ、ないはずの腕があるような脅かしシーンはあったかな…。しかし腕ない設定が加わったことで2倍に面白くなったかというと全然…ww なんでわざわざ要素追加したんかな?って感じでしたwwまあ別にどっちでもいいんだけどw

 

正直なところ、主役はブーミちゃんが好きなので気持ちとしては『Durgamati - The Myth』の方を推したい贔屓な気持ちがあるんですが、出来は『Bhaagamathie』の方がいいと思っています。もしかしたら先に観た『Bhaagamathie』を脳が受け入れていて後の『Durgamati - The Myth』で出てくる差異に違和感を持ったのかもしれません。あと個人的にオリジナル原理主義なところがある。

なんとなく『Bhaagamathie』の方が演出に不自然さが少ないと思うところもあります。細かいですが、指輪を落とすシーンや壁に手を置いたらスイッチを押してたシーンなどが、『Durgamati - The Myth』だとちょっと不自然だったこととか。ある意味リメイクでやり直せると考えられる分、『Durgamati - The Myth』の方が自然さを出す余裕はあると思うんだけど、どうなんだろう。

監督続投だけどプロデューサー以下は違うので、監督に両方の制作現場がどうだったかこっそり聞いてみたいw

 

急にまとめる

最初の方で、オリジナルに忠実だったとしてもめちゃめちゃ改変したとしても作り方としてどっちがベストというのはない、と申し上げましたが、個人的には2度観る以上はめちゃめちゃ改変したやつ観た方がお得なので後者の方が好きですw ちなみにめちゃめちゃ改変がある映画はこういう比較レビューをするとすごい量になってしまうか比較ポイントを見失ってしまうので、ブログとしては多分オリジナルに忠実なタイプの方がやりやすいです。

 

同じ監督が作ったほぼ同じ作品なので、オリジナル原理主義でない限りは耳や雰囲気に慣れてる方、もしくは好きな役者さんが出てる言語版のみの鑑賞で十分だと思います。原理主義またはやっぱオリジナル作品としての内容が気になる方はオリジナル推奨です。

・せっかくなので違いを楽しみたい人

・同じ監督が2度作った作品が気になる人

には両方観るのもお勧めです。

 

リンク

予告

 

「Baras Baras」

 

「Heer」