2023年公開
出演:シヴァカールティケーヤン
アディティ・シャンカル
ミシュキン
スニール
ヴィジャイ・セードゥパティ(声のみ)
監督:マドーン・アシュウィン
言語:タミル語+英語字幕
時間:146分
媒体:Tentkotta
あらすじ
新聞連載漫画『マーヴィーラン』のゴーストライターをしているサティヤ(シヴァカールティケーヤン)は、母と妹とスラム街で暮らしていたが、選挙を控えた議員によって強制的に集合住宅への転居を強いられる。はじめ立地な見た目のマンションに喜び受け入れるが、ものの数時間でずさんな建築による欠陥住宅であったことが判明する。クレームを入れる住民たちであったが、欠陥が公になると政治活動に影響があると管理者側は自分の非を認めようとしなかった。サティヤはそんな状況に反対するどころか受け入れようとするが、これには昔権力に対抗した結果命を落とした父親のことが影響していた。
マンションで起きたある事件をきっかけに母親が自分に愛想を尽かしていると知ったサティヤは絶望し、マンションの屋上から飛び降り自殺をしようとするが、すんでのところで思いとどまる。しかしそこも欠陥部分であったため足を滑らせてしまう。転げ落ちたサティヤは当たり所が悪く、病院に運ばれるものの命尽きてしまう。しかしその直後、彼は奇跡の復活をする。それだけではなく、突如彼の頭の中では、漫画に出てくるような"ナレーション"が聞こえてくるようになり…。
いろいろ
ラジニの『Jailer』の少し前に公開され、評判だった作品です。日本で特別上映はなくちょうど旅行先のマレーシアで上映してたんですが、都合がつかずスルーになってました。観たいとは思ってたので、シバカールティケーヤンのお誕生日に合わせて観ることになりました。
とあることをきっかけに特殊能力を得る、いわゆるヒーロー誕生的な性質を持った設定です。しかし闘う相手はそんなに特殊能力があるタイプではなく、特別持っているもの言えば”権力”であるところの、タミル映画ではよくあるギャングや悪徳政治家タイプの敵。そこに漫画的・メタ的な要素も加わっています。なのでちょっと新しいものと旧来のものが融合したストーリー、と言えるかと思います。話も主人公も基本的に一つの場所からはみ出て広がることはありません。この力に見合っているのか見合っていないのか判断しづらい世界の狭さが、インド映画でやる意味がある気がして好きです。なんかやたらでかい話はハリウッド映画でもいいので。
巻き込まれ型ヒーローでもありました。得ようとして得た力でも、自分でコントロールできる力でもなく。いわば"天の声"に運命を握られているかたち。基本的にそのつもりがなくても天の声通りに事が進んで行ってしまうさまは、コメディのように笑える一方、普通の男が人生を自分の思い通りに描けていない悲劇にも見えます。それもあってか、また主人公の元々の性格も重なり、一般的なヒーローものより人間として成長するタイミングは若干遅めに設定されていたと思います。
敵M.N.ジャヤコディ役のミシュキンの目力がとてもよく。
めっちゃ目を見開くので観てるこっちはじわじわツボにはまっていき、「怖っ!」からだんだん「こわ~っ!(笑)」に変わっていく感じに変化。『Onaayum Aattukkuttiyum(狼と子羊の夜)』に出てきた逃亡者のおじさんです。あの役とてもいい味だしてましたがこちらもなかなか面白かったです。
この人が終盤に見せる狂気が、ある意味主人公とリンクしているところから来ているのっていうくだりが好きでした(ネタバレではない)。
ちょっと笑えるしシリアスでもある、ヒネりもあってサプライズもある、エンタメとして完成度の高い映画でした。昨今の流行のヒーローモノの流れを汲みつつ王道は往かない作品としても楽しめる一作です。
リンク
予告
「Scene Ah Scene Ah」今回はダンスすくなめ
「Vannarapettayila」
おまけ
"天の声"は贅沢に声だけ出演のヴィジャイ・セードゥパティ。仮に日本語版が出来るとしたら、豪華声優or豪華俳優で吹替しても面白いかもw