2018年公開
出演:サティヤラージ
キショール
ヴァララクシュミ・サラトクマール
ヴィヴェーク・ラージゴーパル
ヨーギ・バーブ
監督:サルジュン・KM
言語:タミル語+英語字幕
時間:126分
媒体:ネット配信(Netflix India)
あらすじ
14歳の時に、自分の姉を殺した義兄を殺し投獄されてしまったデイヴィット(キショール)。終身刑を言い渡された彼は長い刑期を全うし、唯一の肉親で9歳年下の甥トーマス(ヴィヴェーク・ラージゴーパル)のところに戻ってくる。出所したばかりのデイヴィットも、5歳から孤独に生き抜いてきたトーマスもお金をもっておらず、デイヴィットはトーマスに手っ取り早く大金を稼げる誘拐の計画をもちかける。その対象は、彼らとは反対の世界に暮らす金持ちの娘スウェーター(ヴァララクシュミ)だった。誘拐し身代金を要求するまでは順調に進んだ計画だったが、あらゆる者が思惑で行動し始めたとき、事態は複雑に絡まっていき…。
いろいろ
不穏な始まりで終始不穏な展開だったクライムスリラー。
評判はあまりよくなかったとの話だったので観る直前そこそこ迷ったんですが(結局、ヨギバブちゃんが出るから観た)、結論としては観てよかったと思えるものでした。
↑トーマス(左)とデイヴィット(右)
はじめは単純に事が済むかと思った誘拐事件(少なくとも最初の時点ではデイヴィットは密に計画を練った上でトーマスに話を持ち掛けている)が、誘拐される若い女性スウェーター、スウェーターの父、秘密裏に捜査を依頼された元捜査官ナタラージが絡んできます。スウェーターはヴァララクシュミが演じるだけあってただ怯えるだけの被害者ではないし(序盤はわりと大人しかったけどw)、ナタラージがかなりの強敵で、鋭い判断で着実に標的のデイヴィットたちに近づいていっているのがシビれました。そんなところに中盤で一つのネタが仕掛けられてて、誘拐序盤とは相関図が変わるくらいの急展開。クライマックスに関してはさらに勢力図が想像していなかったものに変わってるんだけど、でも理由としては至極納得のいくもので、結構面白かったです。
コメディーでもないし、主体的な登場人物が誘拐事件引き起こす時点でみんなハッピーな結末は迎えられないのは承知の上。だけど、やっぱりちょっとやりきれない部分はあるかな。やりきれないっていうのは、映画的演出の不完全燃焼ではなく、この社会に生きる人間として、どうしてもイージーモードでは生きていけないもどかしさ、みたいなものです。そういう意味でのしんどさはあるかな。やー、でもそこを含めても、小出しで明らかになる事実と予想つかない心理展開が面白くて楽しませてもらいました。
ヨギバブちゃん(↑写真右)は、トーマスのルームメイト?同居人でした。時々誘拐事件に協力するけど劇中においては一番のハッピー要素を持った人だった。その辺いつもと変わらないw
デイヴィットとトーマスって、かなり危うい関係。まずトーマスの父親をデイヴィットが殺しているという時点で。トーマスの父親はデイヴィットの姉かつトーマスの母を殺した危険な男で、少年デイヴィットだって仕方なくで殺したわけだけど、やっぱり唯一無二の父親を叔父が殺したっていうのが5歳の幼い子にとっては許せない事なんですよ。トーマスが口を開いたことでデイヴィットは長い間刑務所に入れられることになってしまった。
出所したデイヴィットと大人に成長したトーマスは、表向きは元の関係に戻って一緒に行動するようになったけど、特にトーマスはデイヴィットに対して親愛があるようには見えない…っていうのが劇中でちょっと確認できる。一方でデイヴィットの方はなんか腹の底が見えないっていうかなんという。デイヴィットにとって予想してなかったことが起きてるんだけど、結構淡々とキレるんですよね…淡々と怖い…。デイヴィットは自身の心情を話す相手がいなかったからな。
んで最後まで観たときに明らかになるこの2人の関係が、いいことだったか悪いことだったかは置いといて、私めっちゃ好きでした。
『アリス・クリードの失踪』と『La orca』と『Kadal』の3つの映画に影響を受けたってクレジットがあるんだけど、大きなところは『アリス・クリード~』から主に受けてそうでした。リメイク&脚色って感じ。もしまだ『アリス・クリード~』の内容を知らない場合は、知らないまま観た方が展開を楽しめそうな気がします。
この辛い世の中をサバイバルしている間に、彼ら(誘拐を企てる2人だけにとどまらず)の人間としてのネジがどこか外れてしまっていて、普通の人として生きているように見えても、なにかきっかけがあったら簡単に道を踏み外してしまう。たまたまデイヴィットとトーマスにそのきっかけが回ってくるのが早かっただけ。なんかその真っ当な人間とそれから外れてしまった人間との境界線の話っていうのが、サブタイトル「Idhu Manidhargal Nadamaadum Idam(人間の領域)」に含まれているのかなと思いました。
リンク
予告
「Karma is a Bitch」この歌好き!
「Odura Nari」スウェーターはダンススクールに通ってるっていう設定