インド映画でちょっと休憩

インドに愛を込めて

ラングーン(Rangoon)

2017年公開

出演:カンガナー・ラーナーウト

   シャーヒド・カプール

   サイーフ・アリー・カーン

   ガジラージ・ラーオ

   リン・レイシュラーム

   サハルシュ・クマール・シュクラ

   川口覚

監督:ヴィシャール・バルドワージ

時間:154分

言語:ヒンディー語+日本語字幕

媒体:Netflix

 

あらすじ

1943年第二次世界大戦中の英領インド。独立の運動が盛り上がるムンバイでアクション俳優をしているミス・ジュリア(カンガナー・ラーナーウト)は、元俳優でプロデューサーのルーシー・ビリモリア(サイーフ・アリー・カーン)と婚約していたが、ルーシーは別居中の妻との離婚が進まず、ジュリアに対し煮え切らない態度を取っていた。

そんなストレスを抱えていたジュリアのもとに、インドとビルマの国境の最前線で闘う英印軍への慰問ツアーの話が舞い込んでくる。ジュリアは気乗りしなかったが、彼女が所属するルーシーのスタジオは英軍からの要請を拒否できず、ツアーを承諾してしまう。彼女の護衛には、インド国民軍(INA)の捕虜から脱走して戻って来たナワーブ・マリク伍長(シャーヒド・カプール)が就くことになった。嫌々旅することになったジュリアに対し媚びないなわーブに、ジュリアは嫌悪感を露わにする。

移動中の列車が動かなくなり、近道で川を渡ることになったジュリア一行。しかしその渡河の最中、INAが奇襲攻撃をしかけてくる。ジュリアとナワーブは川に投げ出され、一行とはぐれてしまい……。

 

いろいろ

シェイクスピア3部作や他作品で評価されるヴィシャール・バルドワージによる戦争もの。

史実である部分と史実でない部分が出てきます。語られてない歴史の隙間を縫った歴史の隙間を縫ったフィクション。

 

主人公ミス・ジュリアは、当時英印軍の中でも人気があったフィアレス・ナディアがモデルとされています。わりと分かりやすい反映で、ナディアの方がしてた仮面とそっくりな仮面をジュリアもつけてたり、パールシーのプロデューサーと結婚したナディアと、パールシーのルーシーと婚約したジュリアだったり、色々類似性があります。

 

当時のインドは世界大戦の真っただ中でガンジーによる非暴力主義の独立運動と、チャンドラ・ボースによる武力も伴った独立運動で混沌としていたところ。

日本軍の支援を結成されたインド国民軍(INA)が、イギリスに属する英印軍の捕虜から転向させたインド人たちを兵士に抱え、インドに侵攻していくという情勢。まあこの辺は映画の冒頭でさくっと説明があります。

個人的に知らなくてちょっと意外だったのは、当時英印軍の中に自身をイギリス人と思っているインド人は一定数いたとか、インド人みんながみんな独立したいとは思ってなかったとか、武力で独立運動をするインド国民軍を野蛮だと考えている人がわりといたとか。もっと広い範囲で独立の勢いが高まるのは先の話で、終戦後にイギリスがインド国民軍を裁こうとした頃だとか。だから終戦よりちょっと前の『Rangoon』の頃は「インド国民軍?え、敵でしょ?怖い」っていうインド人の反応が普通に出てきます。

(英印軍とインド国民軍両方にインドって付くから頭混乱しそうになる…)

 

ストーリーは、環境や種類の違う人達の交流や関係性の変化が前半に展開。後半は三角関係や、インド独立運動を通しての愛国心描写へと移行していきます。

クライマックスでジュリアとナワーブとルーシーの3人が同じゴールを目指す(比喩です)んだけど、3人それぞれそのゴールを目指すに至る経緯と理由が全然違ったのが好き。

カンガナーが特によかったです。なんていうかすごいスター!って感じのキャラクターでした!(語彙力がない)肌からスターオーラ出てた。世間知らずで浮いていてどこか現実離れしていることが余計スターっぽい。

 

 

 

日本人としては負の印象が強い日本軍が絡んだ話なのでちょっと耳に痛いヤツですが、監督はそこで海外に対しこだわりがあったみたいで、インド映画にしては珍しく(?)ちゃんとした日本人がちゃんとした日本語で出てきます。東南アジア人とか中国人とかでなく、ちゃんと俳優活動してる日本人。一番多く出た川口さんはメインキャラでこそないけど、台詞はいっぱいあるし出演時間は長め。

ツテなんていくらでもありそうなハリウッド大作ですら日本語が聞き取れないとかザラにあるんだけど、この映画はシャーヒドが喋る日本語めっちゃ聞き取れる!!

日本人的にはこれだけでも観る価値あり。

インド人とインド人で演技する雰囲気がちがって、異種格闘技戦観てる気分になりました。

日本人出てくるから、公開当時は「日本でも公開ある!」って川口さんのファンの方で期待が高まってたので私も期待してたんですが、結局公開はなくてNetflixで日本語字幕が付くまでに留まってました。それでもだいぶありがたいけれども。

英領インドなのでイギリス人キャラもたくさん出てきてて、この界隈だとよく顔を見かけるAir IndiaIのI LOVE INDIAの兄さんことエドワードさんも出てるので、チェックしてみてください。今回エドワードさん微妙に目立たないw

俯瞰して考えると、かなり国際的かつ色んな種類の人間集合って感じでした。英国人/インド人/日本人、映画業界人/軍人、北東インド系の人も出てくるし。

 

 

正直、ヴィシャール・バルドワージ監督の傑作のクオリティを期待するとそこには及ばないところはある内容ですが(個人的には特にCGに違和感があると冷める傾向にあり…)、いろいろ見どころは詰まってる作品です。私は1回目ちょっと期待しすぎて期待に及ばずって感じだったところ、数年間をあけて2回目観たら記憶より全然いいじゃん、ってところに落ち着きました(笑)。

結論:バルドワージ監督はシャーヒドをボロボロにしたい。

 

リンク

「Rangoon出演日本人俳優陣インタビュー ―LivAiA!TV―」

参加した日本側の貴重なインタビューがある!

 

「Bloody Hell」bloody hellはミス・ジュリアのキャッチコピー・決め台詞

 

2曲はイントロがミュージカル的でした 実験的?

「Julia」ミス・ジュリアの紹介ソング

 

「Tippa」不本意に列車旅することになってしまったところ