インド映画でちょっと休憩

インドに愛を込めて

Marjaavaan(マルジャーヴァーン)

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2019年公開

出演:シッダールト・マルホートラ

   リテーシュ・デーシュムク

   ターラー・スターリヤー

   ラクル・プリート・シン(特別出演)

   ナーサル

   ラヴィ・キシャン

   ノーラー・ファテーヒー(特別出演)

監督:ミラープ・ザーヴェーリー

言語:ヒンディー語+英語字幕

時間:133分

媒体:ネット配信(米アマゾンプライムビデオ)

 

あらすじ

用心棒のラグー(シッダールト・マルホートラ)は、ムンバイのヤクザ アンナー(ナーサル)のお気に入りである一方で、アンナーの息子ヴィシュヌ(リテーシュ・デーシュムク)との関係は最悪だった。ラグーがアンナーに気に入られていること、小人症のヴィシュヌに比べラグーの身長が高かったことを理由に執拗に恨まれていた。

ラグーはある日町にやってきたカシミール出身のゾーヤー(ターラー・スターリヤー)に一目惚れする。ゾーヤーは子供に音楽を教え、音楽祭への出場を企画していた。音楽祭への出場が決まったその時、ゾーヤーはアンナーと敵対するガイトンデーが殺される現場を目撃してしまう。そのためアンナーはラグーにゾーヤーを口封じに殺すよう命じる。それはすべてラグーとゾーヤーの関係を察したヴィシュヌが手を回したことだった。ゾーヤーのことを大切に思っていたラグーはゾーヤーに告白し一緒に逃げようとするが、ヴィシュヌたち一味がそれを阻む。雨が降りしきる中、子供たちを人質に取られたゾーヤーとラグーは、大切なものを失う選択を迫られる…。

 

いろいろ

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切ない愛と復讐の物語。

主演と悪役が共通する『Ek Villain』を意識して作られているというか、『Ek Villain』のライターが本作の監督です。てかこの監督さん、割と有名な映画のライターやってたのね。監督としては4作目です。

 

単純にラブストーリーとして括るにはアクションがけっこう多いです。なのでアクションとしても観ていいと思います。

アクションがですね、なんか南インド映画っぽい。冒頭の主人公登場シーンからして南インド映画っぽい。ボリウッドの南インドっていうと、2000年代後半から2010年代前半にかけての南インド映画ブームで作られた数々のヒンディー映画が思い出されますが、まさにあんな感じ。今はブーム去ったというか南インド映画要素がボリウッドにうまく吸収されて進化してると思うんですが、それより前の造りっぽさが際立ってるので、今それやるん!?ってちょっとびっくりしたなぁ。

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↑これに限らず

まぁ逆に考えればちょっと落ち着いてきたボリウッドにまたこういう要素がバーンと出ているのも久しぶりって感じでアリっちゃアリかも…と思うとわりとこういうアクションも楽しめました。南インド映画の中でやると普通だけど、ボリウッドのセオリーの中でやると結構目立つんだよね。

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主人公の本気(マジと読む)の場面で出てくるのはなぜか口に入ってたマッチ…なんでマッチにしたん!?なんか変な味したりしない!?赤ちゃんでもあるまいしお口に変なもの入れないの!!あとそういう出し方すると『Anjaan』を思い出す…あっちは爪楊枝だった。爪楊枝もだいぶ謎だけどな!!

あとクライマックスでテルグ映画が喜びそうなオモロ棍棒出てくるから期待しててくれ。あれどういう構造だったんだろう。

 

一方でアクション以外、キャラクターの心情描写はとことんナイーブで、これはかなりボリウッドだった。というかバットファミリー映画観てる並みに湿っぽくて、この映画バットファミリーが作ったんじゃねぇかって勘違いしてしまった。観た後で知ったが違うんか…。『Ek Villain』の監督がバット家の人なのもあったからなんかそういうものかと思ってしまった。イムラーン・ハーシュミーとかランディープ・フーダーが出てるバットファミリー映画をいくつか観たからじっとりしたラブストーリーにもだいぶ見慣れてきたかなと思ったけど、この湿度の高さなかなかですよ…。

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物理的にも濡れてた

 

湿っぽさに加えて台詞が凝ってました。仰々しさすらある。たとえ話ほどじゃないんだけど物事をストレートに言わないって感じのアレです。世界観作り出そうとしているからよかったけど、個人的にはここ最近リアリティ寄りの台詞にばかり親しんでたので字幕読むがちょっと大変だったw日本語字幕だったら、凝ってるのは気にならないかもね。

 

シッダールトくんは育ちの良さそうなところが彼の魅力ではあるんだけど、おそらくまた自分の新境地にチャレンジしたかったのかな~って雰囲気で根っからの暴力環境育ちの男の役。これまで不遇な環境で暮らす役がなかったわけではないけど、こういう役に就くたびチャレンジ感がある。

あとハチマキしてたからちょっと昔の漫画とか格ゲーっぽさがあった。

 

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ラグーの指にはキリスト教とイスラーム教とシク教とヒンドゥー教のモチーフのタトゥーがあって、彼の友人にムスリムが居たり近くにモスクがあったり色々と宗教の歩み寄りを映し出す描写がされてました。宗教の共存・融和はボリウッドでよく出てくるテーマで私はボリウッドの魅力の一つだと思ってるんだけど、ここ数年でインドの現実がその逆、政治のヒンドゥー至上主義とかパキスタンへの敵対心とか対立が強くなっているところで、今そういうテーマがあるとふと我に返ってしまう…。作り手が共存・融和をどこまで考えてるんだろうって思ってしまう。そういう風潮になってしまっているが故にあえて今やることに意味があるかもしれぬがな。

 

私の好きなラクル・プリート・シンが特別出演なんですよ

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ギャーーーーーーー!セクシー!!

ラグーのことを好きな娼婦役です。

特別出演の概念が崩れるくらい長時間出演してたぞ??ヒロインより長かったぞ?特別出演出演時間のギネス更新しちゃうのでは???

 

あとは遭遇すると個人的にテンション爆上げしちゃうラヴィ・キシャンおじさん!!

今回はいつもと変わらず悪役顔だから悪徳警官か!?と思いきや悪役じゃなかった!!普通に真面目な警察の人だった!

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映画のスチルがなかったのでオフショットでどうぞ

 

悪役のヴィシュヌ、もといリテーシュ・デーシュムクは『Ek Villain』とはまたちょっと違った種類の狂気を持ち合わせる役。ここでちょっと疑問なのが、ヴィシュヌのキャラクターに小人症設定が必要だったのかな?というところ。彼が異常なレベルで卑屈になっている要因とされていたけども、父親がラグーをかなり気に入っているという点だけでも十分彼が卑屈になる設定として機能してると思った。だから小人症という設定を持たせて意表を突きたかったのかなぁ…と憶測。この設定なくても十分成立するかな。

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なんだかんだ書きましたが、わりと満喫できた映画でした。あえてなのか意図してないのか、深いところから浅いところまでツッコミどころかなりあるんですよね。今回書ききれてないところで、文字化できない箇所とか細かすぎて伝わらないものとか含めてかなり色々あった。てか久々に出会ったなツッコミしがいのある映画。インド映画に出会ったばかりでセオリーに慣れてない頃とか一昔前の盛り盛りの演出とかに圧倒されて目に入るもの色々にツッコミ入れてたあの頃の映画を思い出す。最近ツッコミどころ多い映画観てなかったのでかなり充実した鑑賞タイムでした。というわけでどっぷり染まれた方には申し訳ないけど、ちょっとナナメ目線でした。世界観が合えばじっくりハマれると思います。

 

リンク

ちょっとそれネタバレでは~~~???ってのは貼らないようにします

観ると決めたらネットの動画漁る前に観た方がいいと思う

 

「Haiya Ho」

 

「Ek Toh Kum Zindagani」アイテムソングゲストに『Street Dancer 3D』とかに出てるノーラー・ファテーヒー!こちらもセクシー!バチェラーパーティーの女子たちが乗り込んできたって設定。

この後の話が怒涛すぎてこの人の存在すっかり忘れてしまっていた

オリジナルはこの曲でしたっけ?

 

「Kinna Sona」

 

「Peeyu Datt Ke」これは本編に入ってないやつ。BGMでもこの曲は流れてなかったような…?せっかくヌスラト・バルーチャーがゲストに居るので貼っとこう

これもサンプリング曲?わかったのこれだけだったけど他にも入ってるかも?

 

おまけ

ナーサルさん演じるヤクザのボスの名前を「アンナー」にしたんだけど、多分タミル語の「兄貴」の意味だと思います。ってことでヤクザはタミル系の人なんだけど、ムンバイのスラムにタミル系が一定数いるのと関連付けてたりするんだろうか…?ちなみにそれ以外はあんまりタミルっぽさはなかったです。