2020年公開
出演:プリート・カマーニー
マニーシャー・コイララ
シャーリー・セーティヤー
ニキータ―・ダッタ
ジャーヴェード・ジャーフリー
監督:ニーラジ・ウドワーニー
言語:ヒンディー語+英語字幕
時間:111分
媒体:Netflix
あらすじ
俳優志望のルミ・イーラーニー(プリート・カマーニー)は映画界のスターになりたいという夢を抱え演技学校に通っていた。しかし母親のダイアナ(マニーシャー・コイララ)はそんな彼の夢を知ってか知らずか、息子は学校を卒業したら代々経営してきたイラニカフェ(イラン系カフェ)を継いで再興してくれてくれると信じて疑わない。
はやり夢を諦められないルミは、同じく俳優志望で交際中のマリカー・チョープラー(ニキータ―・ダッタ)と郊外で同棲を始め、色々な俳優オーディションに挑戦する。しかし全く相手にされず、時間だけが過ぎていく一方だった。さらには、マリカーの方が先に夢へ一歩進んでいこうとしていた。
ある日ルミは新進の監督から新作映画の企画の話を聞く。もう脚本もヒロインも決まっていたが、資金だけが集まらず撮影が開始されないところだった。ヒロインはマリカーに内定していた。資金さえ提供されれば主演俳優を明け渡していいと聞いたルミは、以前カフェを買い取ろうとした業者の存在を思い出し、カフェを売って映画製作資金に充てようという計画を立てるが…。
いろいろ
その昔イランから移住してきたゾロアスター教徒であるパールシー系の人たちが中心になったお話です。
夢と人々の大切なもの、そのどちらかを守るとしたら、どちらを選択するか。
どんなもんやろな、って思いながら観始めたんですけど、案外いいもんでしたよ!
夢は大きく!な男の子と、頑固な母親と、街の人たちの思い出が詰まったカフェ。
コメディタッチかつふんわりと温かみのある作風で、ほっこりしました。
なんとなく先が読めるようなシンプルなお話です。だからある意味安心して観られる。劇場公開なしのNetflix映画です。お家で観るのにちょうどいい軽さですねぇ。
主演は本作がおそらく長編映画2作目の出演となるプリート・カマーニー。優しそうな顔立ちでロマンティックコメディーが似合いそう。知名度は低いですがまだまだ24歳、これから活躍してほしい感じです。眉毛が特徴的で、そこだけちょっとアーユシュマーン・クラーナーっぽいw
お母さん役にマニーシャ・コイララ。どうしても2012年頃のがん闘病のイメージが強くて、久しぶりって思ってしまったけど『Sanju』に出てたわ、出てましたわ…。
ちょっと頑固で人の話を聞かないお母さんのダイアナ。でも夫を早くに亡くして女手一つで息子とお店を守ってきた努力家です。
その亡くなったお父さんは出てこないか…と思いきや、謎に幽霊として出てくるよ!
オモロい役をよくやってるジャーヴェード・ジャーフリーおじさんがお父さん役です。ああ、おじさんこういうの適任だわ。
一応幽霊と言われていたけど、幽霊というよりかは息子の中にだけ存在するイマジナリーなやつかもしれません。息子とだけ会話するから。息子の精神状態のメタファーのような。なんとなくだけど、息子は精神的に大人と子供のはざまにあるからまだ存在するけど、いつか完全に大人として成熟したら現れなくなりそう。息子はそれに気が付いたとき少し寂しくなるけど、現れない事を静かに受け入れる、みたいな(妄想です)。
日本語で"生きがい"って単語が出てきてちょっとびっくりしました。そういえば同じNetflix配信のインド映画『ハウスライフ』は"引きこもり"って日本語が出てきたなぁ、なんか変な繋がりを感じてしまう(笑)。おそらく主人公と同じパールシー系で、ムンバイで暮らす人の"生きがい"を取材してる女の子が出てきます。主人公は、その女の子の視点を通して、今まで興味を持とうとしなかったカフェのことに触れていきます。
夢と現実のはざまで青年が自分の生き方を考えることは大人になることの通過儀礼のような定番のお話だけど、色々な小さなエピソードが旨味になっていていい映画でした。
ただちょっと一つだけ。若い人が夢を持つこと自体は悪くないので、ストーリーにおける夢の扱いを大事にしてほしかったかなって思いました。じゃないと映画なのに夢がないw
てかイラニカフェ好きなんですよね!!観光客としてはなかなか入りにくいですけど(というか旅行好きなくせにレストラン全般入るの苦手w)、あのレトロな雰囲気たまりません!
イラニカフェはパールシーが作ったカフェの総称で、歴史ある老舗カフェです。ムンバイの名物。イラニカフェは日本で馴染みはないですが日本語で検索したら案外色々な記事が上がってくるのでお試しで調べてみてください。
『ガリー・ボーイ』や『めぐり逢わせのお弁当』に出てきたカフェ"Koolar&Co."は有名なイラニカフェの一つで、『マスカ ~夢と幸せの味~』でも外観がちらりと出てきます。2008年のムンバイ同時多発テロで攻撃の対象となった"レオポルド・カフェ"も有名で、観光客に人気。レオポルド・カフェ行ったことあるんですけど、当時は多分あんまりイラニカフェを知らなかったというか、旅行先で緊張していたからか新しいものより安心したものを口にしたくて普通にコカコーラ飲みましたw勿体ねぇwwここで触れてますけどめちゃめちゃあっさりw あとハイデラバードにもあります。チャールミナール目の前のカフェにも行きました。
あ、映画レビューのはずがただの思い出話に…。
タイトルの"マスカ"は映画観たらすぐにわかりますが、クリームみたいなバターのことで、パンに挟んで食べてます。パンの見た目はムンバイ名物パオバジにも似てます。いろいろ挟むもので名前が変わるのかな?食べたことないですけどパールシーが定着させた地元名物みたいなものですかね~?カロリー高そうw
カフェのシーンではマスカ以外にも色々な料理が流れるように登場します。定番インド料理とはちがったパールシー料理なのか、お味が気になる料理がたくさんでした。よだれがじゅるり。
イラニカフェの話って分かってたらもうちょっと早く観たのに~!!
パールシーはインドに暮らす少数系の人たちだけど、政治や経済で活躍する人たちも多く、たびたびヒンディー映画に出てきます。パールシーを認識できるようになると面白いところです。これ観る前にパールシーのこと知っててよかった…。でも知らなくても台詞の中で断片的にパールシーのこと話してくれるので、知るきっかけになっていいかもですね。
パールシーのこといつ知ったか覚えてないけど、めちゃめちゃ意識した映画はアクシャイ・クマール主演の『Rustom』だったな。主人公がパールシー系出身で、裁判にかけられることになった時パールシーコミュニティの人が彼を手助けしようと頑張ってた記憶。ちなみに『マスカ ~夢と幸せの味~』の舞台のイランカフェの店名も"Rustom"でした。男性の名前らしいですが、パールシーの人の定番名だったりするんですかね?名前と言えばパールシーは名字に特徴的な人がいるそうで、"何らかの単語+ワーラー"という名字だとパールシー系だとかなんとか(って昔聞いたけど今ソースがない)。それとボリウッド界だとボーマン・イーラーニーが有名なパールシー系俳優で、名字がそのまんまイラン系。ボーマンさんは『マスカ ~夢と幸せの味~』に本人役で出ています。
これ目当てにわざわざNetflix入会するほどではないですが、すでに会員だったらオススメです。
リンク
音楽は映画に合わせてさわやかタッチのが多いです。
「I Wanna Hang With You」
「The Maska」
おまけ
ブロガーの女の子がまとめたイラニカフェ本、欲しい~!!