インド映画でちょっと休憩

インドに愛を込めて

僕の名はパリエルム・ペルマール

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2018年公開

原題:Pariyerum Perumal

出演:カディル

   アーナンディ

   ヨーギ・バーブ

監督:マーリ・セルヴァラージ

言語:タミル語+英語字幕

時間:154分

媒体:ネット配信(米アマゾンプライムビデオ)

 

あらすじ

被差別カーストのペリヤンことパリエルム・ペルマール(カディル)にはカルッピという狩りの相棒の犬がいたが、カルッピはペリヤンたちを忌み嫌う別の階級の男たちの手によって残酷に殺されてしまう。ペリヤンが大切にしていたカルッピを失ったことは、彼にとって心の深い傷となる。

不可触民解放運動の指導者Dr.アンベードカルのような弁護士になることを夢見ていたペリヤンは法科大学に入学する。しかし英語で行われる授業についていけず教授から叱責を受けてしまう。ジョー(アーナンディ)はそんな彼と仲良くなり英語を教えるうち、彼に惹かれ始める。

彼女は家族の結婚式にお気に入りのペリヤンだけを友人として招待した。これを聞いたジョーの父親は彼女に急用をいいつけ席を外させ、ペリヤンに二度と娘に近付かないように忠告する。

ペリヤンはジョーに事情を隠し避けるようになるが、事態はそれだけでは収まらなかった。ペリヤンに降りかかる憎悪は次第に大きくなり始める…。

 

いろいろ

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やっと観た…2018年タミル映画傑作リスト常連の映画。ネットに上がってる感想の不穏な空気に手を付けるの躊躇しまくってたけど、必見の内容でした。オススメです。

 

カーストの下層にいる若い主人公が、村と大学だけの世界の中で上位カーストの人たちから嫌忌の感情を向けられ身体的に圧力を受けながらも抵抗をする話です。大学生で勉強とか友達とか恋愛とか出てくるけど、やはり中心となるのはダリットの問題で、社会派作品って感じかな。

本作はこれが監督デビューのマーリ・セルヴァラージ、またプロデューサーはKabali』『Kaala』の監督でダリットのコミュニティ出身のパ・ランジット。

 

冒頭のワンちゃんがしんどい…犬好きとか犬飼ってなくてもめっちゃしんどい…。言葉で言い表せないくらい凄まじいシーンだった。けど大事なシーン。
中盤と最後に映る売店のコップは『Sarvam Thaala Mayam(世界はリズムで満ちている)』でも言及されていたあの事だよね??(違ったらごめん)これが最後のシーンに繋がるのが好きです。

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 (結局カーストについては外側の人間でどちらの立場にもなったことないし知識も浅い私が何を言うても薄っぺらくなってしまうし間違ったことを言うかもしれない)

ペリヤンの言う「俺はあなたたちの邪魔をしなかった」から始まる訴えの重さとあちらさん側の無価値なプライドを比べるともうモヤモヤがすごい。あちらさんはたまたま優位なカーストに生まれただけでしかないんだから思い上がるなよって思ってしまうんだけど、実際力を持ってるのはあちらさんだけなんだよね…。
大なり小なり時には殺人未遂まで起きているのに警察の介入が一切見当たらないのは外側の人間からすると一見不思議だけど、逆に内側の人としては一連の出来事に警察が絡んでくることの方が珍しくて違和感があることなのかもしれないという結論に至りました。そして警察が出てくるシーンは、警察が弱者の味方になってくれるわけじゃないっていうシーンでした。

 

恋愛とは違う意味で人を想う気持ちが切なくて苦しかったです。ペリヤンはヒロインのジョーにすべてを打ち明けるとジョーと家族にとって良くないと判断して、ジョーの笑顔を守るために自分の中だけに秘めようとする。でもジョーはそんな事情を知らないから、ペリヤンが急に人が変わったかのように態度を変えてしまったとしか写らない。大学内でいざこざを起こし荒れていくペリヤンを心配し気に掛ける姿が余計に加害側の燃料となってさらに激しい憎悪を招く一因になっている悪循環がクライマックスまで続いて、本当地獄のようでした。観ている私も感情がぐちゃぐちゃになりそうでした。

ジョーは多分今まで大事に愛されて育てられてきてとても幸せそうな女の子だけど、その裏では彼女の想像の及ばない色々なことが起きている。ジョーが無垢であればあるほどそのコントラストが辛い。

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そもそも彼には彼女が好きかどうか考える精神的・時間的余裕すら与えられなかった。おそらくジョーも高カーストの友人アーナンド(バブちゃんの役)もペリヤンの道を切り開く人にはなれなくて。ペリヤンが望む未来に彼を連れて行けるのはペリヤン自身でしかなく。でもカーストの違うバブちゃんとか同郷の先輩(かな?)とかもっと味方が増えてほしいなぁ。ほんとに。

 

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教授に「Cから始まる単語言うてみよ」って言われて「大文字のCですか小文字のcですか」って言ってしまうバブちゃんは今日も相変わらずバブちゃんでしたw

バブちゃんがノートに卵を書いてたその先のシーンの終わりごろに吐いてた教授のヘイトスピーチがしんどくて、卵のくだりは笑っていいのかわからなくなったなぁ。教授だからって人間性がちゃんとしてる人じゃないのよね。あんなこという教授クビになってほしいけど。ペリヤンのお父さんを見てもニヤニヤしてたし。ところで、この映画に限らずインド映画の教室ってクラスメイトに対してあざ笑うこと多いよな…。そんな笑うことないじゃんってところにもクラス中が笑ってるよな…日本もあんなのだったっけ…?

 

リンク

「Potta Kaatil Poovasam」心のオアシスな曲

 

「Naan Yaar(俺は誰)」激情を歌詞にすることが多かったですこの映画

 

「Vanakkam Vanakkamunga(村にようこそ)」日常って感じの映像

 

余談

2018年タミル映画傑作リストはネットにちょっとずつ内容が違う記事色々上がってるやつ参考にしました。"Tamil 2018 Best Film"とかで検索したら出てくるやつ。『Pariyerum Perumal』と『Kolamavu Kokila』と『Ratchasan(アルファベット表記ゆれあり)』はほぼ必ず入っててホントにオススメ。ちなみにヨギバブちゃんは『Pariyerum Perumal』と『Kolamavu Kokila』に出てます。