インド映画でちょっと休憩

インドに愛を込めて

Madras(マドラス 我らが街)

2014年公開

出演:カールティ

   キャサリン・トリーサ

   カライヤラサン

   チャールズ・ヴィノート

   ナンダクマール

監督:パー・ランジット

言語:タミル語+日本語字幕

時間:150分

媒体:スクリーン(キネカ大森)

 

あらすじ

北チェンナイのヴィヤーサルパーディにある公団住宅に暮らす労働者階級の青年カーリ(カールティ)。IT企業に勤めながらも、自分が育った北チェンナイに愛着を持っていた。

彼の住むエリアには大きな"壁"があり、町の政治家の故クリシュナッパ(V. I. S. ジェヤパーラン)の肖像画が描かれていたが。しかしこの壁はここで起きた対立と因縁の歴史の象徴となっていた。

その昔、クリシュナッパとカルナーカランは違うカーストながらも絆で結ばれた同志であった。しかし次第にその関係は絶たれてしまい、それぞれの支持者も完全にわかれる。それぞれのエリアの間にある"壁"にはクリシュナッパとカルナーカランの絵が描かれていたが、その壁をどちらの管理下に置きどちらの政党の絵を描くか揉めた結果、暴力沙汰になってしまう。暴力は殺し合いにまで発展し、双方に死人が出る。一連の事件で死んだクリシュナッパの遺影が描かれたところで停戦状態になるが、この壁の前でたまたま複数の事故が起きたことも相まって、血を欲する壁として住人に避けられるようになっていた。

カーリの親友で政治家の卵のアンブ(カライヤラサン)は、自分たちの住居エリアにあるにもかかわらず対立側のクリシュナッパの絵が描かれたこの壁を、自分たちの下に取り返そうと躍起になっていた。壁を取り返すことに反対する者もいたが、グループは対立の方向を選択し壁にペイントを加えてしまう。対立するクリシュナッパ側のメンバーはこれを知り、アンブの殺人を企てる。

襲ってきた男たちから逃げるアンブとカーリだったが、その最中カーリがクリシュナッパの孫ペルマール(マイム・ゴーピ)を殴り殺してしまったことで、事態は最悪の方向へ進んでいく…。

 

いろいろ

暴力と活気にあふれた街を舞台にした、"北チェンナイもの"の映画です。

タミルの映画人にとって魅力的な街に見えるそうで、わりと定期的にここが舞台の映画が出ます。ハードな物語のアクションからコメディまでありますが、メジャー作品のほとんどが暴力やヤクザをイメージさせるもの。

有名どころだと『ヴィクラムとヴェーダ』『Vada Chennai』『ビギル 勝利のホイッスル』『Bhooloham』等々。

ちなみに私調べだとこの辺の映画も北チェンナイが舞台っぽい→『Jada』『Enakku Innoru Per Irukku

現実にここに住む人たちにとっては治安が悪いのは確かにそうなんだけど、色々な映画がありつつ暴力ばかり描かれるのは複雑な気持ちなところもあるみたい。治安悪化の助長の種にならないか不安や、偏りすぎたイメージへの懸念とか。広島がヤクザ映画の舞台になりがちだったのを思い出す…。まあ、ここに暮らす人も他に暮らす人たちと同じく生きとし生けるものだしな。

 

相変わらずあらすじを予習せずに不可抗力で目に入ったレビューだけで脳内で予測した結果、誰も生き残らないような焼野原な結末を迎えるのかと思ってたんですが、

そこまでのことは起きず、青春半分政治半分という感じでした。

 

青春なところはカールティ演じる若者カーリが友達とつるんだり恋したりするところですかね。

すぐカッとなって衝動的になってしまうのも、落ち着いてない若者っぽい。ここはもう働いてる身なんだし大人になれやって思うんだけど、落ち着いてしまったらお話始まらないからまぁいっか。

恋を掴むまでのプロセスは映画としてはわりとイージーモードな方だったと思います。ずっと恋愛してると恋愛映画になっちゃうので、あくまで青春の範疇内って感じだろうか。

 

俺のイメージするのタミル映画の政治ものは自身の保身のために非人道的なズルいことをするやつ…

そういうのが出てくると勝手に"あらしやる映画"(அரசியல்/arasiyal)って呼んでる… そのずるいところが毎度背筋凍るんや

俺的あらしやる映画の代表

ちなみに大きな"壁"は実際存在するそうで、ヴィヤーサルパーディのお隣エリアPeramburの通りにあって、そこで撮影されたそうです。あるんか!!『Madras』自体は創作ストーリーだと思いますが、どうだろうか。

 

 

パー・ランジット監督はダリトのキャラクターを登場させる映画を数多く監督・プロデュースする人物で、本作もその一つ。

パー・ランジット監督作品は比較的作家性を強く感じられる気がします。

ただのフィクションの"北チェンナイもの"にするつもりはなさそうで、実在する"Blue Boys"を登場させてたところに面白み(interestingの方の面白いって意味)がありました。Blue Boysの本作シーンへの差し込み方が、カシュヤプ監督の『Mukkabaaz』『Manmarziyaan』を彷彿とさせたけど、パー・ランジット監督の方が先に始めたかもしれない。

 

政治的な部分や暴力沙汰にヒヤっとしながらも、目的に向かっていい意味でも悪い意味でも全力に生きる姿はとても生き生きとした映画になっていて、面白かったです。観てよかった。

 

 

リンク

調べものしてたら気になる記事見つけたので貼っときます(書くとき参考にした)

 

「Madras」

 

「Naan Nee」

 

「Agayam Theepiditha」